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04.15
Mon
2人はホテルの、白で統一された洒落たレストランで、バイキング形式の朝食をとった後、彼女の部屋に行った。キャサリンはマックスに、先に部屋に帰って仕事をしてくれるように言ったが、マックスは、君と一緒にいたいから、と言ってキャサリンの部屋まで付いて来た。

マックスがキャサリンと一緒に居たかったのも本当だが、実は、彼は彼女が何のために部屋に帰りたいと言ったのかが気になったのだ。彼女を見張るために部屋まで押しかけたなんて、情けない話だ。
マックスの頭には、昨日くすぶらせた嫉妬からの想像が、いまだ消え去ってはいなかった。
だがしかし、彼は彼女について来て良かったと思っていた。
彼女が、仕事を済ませるために部屋に戻りたいと言っていた事が分かったからだ。
彼はキャサリンの仕事が終わるまで、彼女の部屋から窓の外のシンガポール湾を行き来する船の多さを面白がり、リビングのソファでゆったりと新聞に目を通した。

そしてキャサリンがW&Mに資料をファックスし終え、2人でマックスの部屋に戻るあいだ、彼女は行きたい観光スポットについて相談とも独り言ともとれる話を彼に聞かせ、彼は頷いたり相づちを打ったりした。


部屋に戻ると、マックスは寝室でノートブックを開き、仕事を始める。
キャサリンはリビングでパンフレットを開き、今日行く場所とルート確認をし始めた。

暫く経つと、彼女はマックスのいる寝室のドアをノックした。

「どうぞ」
マックスは答えた。
キャサリンがドアを開けて顔をのぞかせる。

「その・・・、お邪魔じゃ無かったら、ここでパンフレットを見てもいいかしら?」

マックスは、パソコンを見ていた顔を彼女に向けて、微笑んだ。

「いいよ。でも画面を見るのはダメだよ。悪いけど、機密が含まれているから・・・」
「もちろん、そんな事はしないわ。独りであんなに広いリビングにいると、なんだか寂しくなっちゃって。
 あなたが広すぎるって言ってた意味が、よく分かったわ」

彼女は照れ臭そうに言うと、どこにいたらいいかしら、と彼に聞く。
マックスはパソコンの向きを変え、椅子を移動して座りなおすと、彼女にベッドを勧めた。
キャサリンはベッドの背もたれに背を預けて座り、パンフレットを広げ始める。

マックスは届いているメールを確認しながら、彼女を見た。
座る位置を変えたために、彼の正面にベッドと、そこに座っている彼女がいる。

彼女は大人しくパンフレットを確認し、たまにパンフレットに印(しるし)を付けている。
時たま、うーん、とか、なるほど、とか、独り言を言っている。
そんな彼女をマックスは、愛らしいと感じた。

今までマックスが付き合って来た女性は、彼がパソコンの前に座ることを嫌がった。
確かに彼はパソコンを前にすると、時間を忘れて夢中になり過ぎることが多い。
女性たちは、買い物やパーティーに行くか、劇やショーを観に行きたがり、そして彼が座り込むと、たくさんの文句を言って、彼をそこから動かそうとする。
どうしても彼が動かない場合は、彼を置いて出かけてしまうのが常だった。と言うより、彼がそういう風に彼女たちに勧めて来た。
そんな時マックスは、置いて行かれた事に、ほっとしたものだ。

こんな風に、いる場所を共有しながら、大人しく待たれるのは初めてだった。

マックスは届いたメールの小難しい内容と関係なく、顔をにやつかせた。

――彼女はさっき、寂しいって言ってたな。僕がいなくて寂しいって事だろうか?
マックスはメールの返信を書き込みながら、また顔をにやつかせ、打ち込みを間違えた。
デリートキーを押して書き直し、また間違える。
そんな自分がおかしくて、クスリと笑う。

「どうしたの?」
「えっ?」
「さっきから、にやにやして、笑っているわ」
「ああ、ちょっと本社から来たメールがおかしくて。ところで、行くところは決まった?」
「まあ、大体ね。あなたは行きたい場所は無いの?」
「ナイトサファリ。そこは必ず行き先に入れておいて欲しいな」
「ナイトサファリ! いいわね! 私も行きたかったけど、独りではどうかと思って忘れていたわ。じゃあ
 夜のスケジュールの変更をしなきゃ。もう! 早く言って欲しかったわ」

彼女は口を尖らせると、またパンフレットを捲り出した。
マックスは彼女の様子にまた微笑むと、ノートブックに目を戻す。

「待たせてごめん。早く片付けるようにするよ」
「・・・いいのよ、忙しいんでしょ。大変ね、CEOって」
彼女はパンフレットを見ながら言う。

「そんなに大変じゃないよ」
マックスも、キーボードを叩きながら言う。
「そうかしら? 行きの飛行機でもずっと仕事をしていたし、今日も休日だけどメールをチェックしたり、
 大変そうよ」
彼女は相変わらずパンフレットから目を離さず、ぱらり、と捲る。

「うーん、今片付けておいて、後でゆっくりしたいからね。NYにいる時ならそんなに残業もしなくて
 いいし、休日まで仕事はしないようにしてるよ」
「そうなの?」
キャサリンは彼の答えを意外だと思い、パンフレットから目を離して彼を見た。
マックスはパソコンと睨めっこを続けている。

「何しろ僕には優秀なスタッフがたくさんいるからね。ここだと本社と時差があるから、どうしてもやっ
 ておかないとタイムラグがね・・・。それに、時差を利用して、普段ダイレクトに連絡が取れない支店
 に連絡するのもいいかな、と思って」
「勤勉なのね」
「勤勉? それぐらいの事、彼らに支えてもらっている義務と責務だと思っているよ」

キャサリンは、やっぱり勤勉だわ、と目を丸くした。
それに努力家だ。
彼のそういう性質は、プレイボーイの様な見た目と物腰の柔らかさからは、かけ離れている。
特に今の、Tシャツと膝上ジーンズという格好からは想像がつかない。
今の彼は、自由を謳歌している大学生だと言っても通りそうだった。

キャサリンは作業を続けているマックスから視線を離し、またパンフレットに目を戻した。
彼の希望通り、ナイトサファリを行き先に加え、営業時間とルートも確認をした。
タイトなスケジュールになってしまったが、無理が出そうなら、途中で目的地の内のどれかを省けばいいだろう。

彼女は、うーん、と大きく伸びをして、開いていたパンフレットを顔の上に乗せ、ベッドに横になる様に身体をずらす。
パンフレットを真剣に見過ぎたせいか、少し目が疲れた。
彼女は顔に当たる紙の冷たさが気持ちいいと感じながら、目を閉じた。




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