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04.13
Sat
――何て奴、何て奴、何て奴! あんな失礼なことを言うなんて。
キャサリンは彼に腹を立てた。
だが裸でクローゼットに逃げ込んだ彼の姿に、すぐに可笑しさが込み上げる。

クスクスと笑うと、彼女はベッドに座った。
さて、上掛けを何時までも身体に巻きつけているわけにもいかない。
彼女は声を張り上げて、クローゼットの中のマックスに声を掛ける。
「マックス、あなた、私の服を仕舞ったって言っていたわよね。どこにあるの?」

「ああ、ここにあるけど、君の服はシャンパンで汚れているだろ。手配をしておいたから、とりあえず、
 バスローブでも着ておきなよ」

クローゼットの中から、少しくぐもった彼の声が聞こえる。
そういえばそうだった、とキャサリンは思った。

しかし手配をしたとはどういう事だろう、それに昨日なぜ彼は私の服をクローゼットまで運んだのかしら、と思いながら、彼女は昨日まとっていたバスローブを探した。
バスローブはベッドのマックス側の横に、くしゃくしゃになって落ちていた。
彼女はそれを拾うと、袖を通す。

「はい、これ。で、今日はどこに観光に行くつもり?」

彼はTシャツに膝上までのジーンズという服装で、クローゼットから出てきた。
薄いTシャツがマックスの体のラインをはっきりと形どる。半袖から出ている二の腕の筋肉が男らしい。
いつものスーツ姿とかけ離れたラフな姿は、彼を実年齢より若くみせている。
そんな彼も、なかなかにキュートだ。

彼は、手に持っていたキャサリンの服をベッドに置いた。
彼女の下着が服の間から見えている。
キャサリンは少しムッとしながら、下着を隠すように服を抱えた。

「どうして私の服を隠したの?」
「あ、それは・・・、つまり・・・」

彼は、言いにくそうにした。

「マックス!」
キャサリンはじろりと彼を睨んだ。

「・・・君に部屋に帰って欲しくなかったんだ。だから、服が無ければ帰れないだろうと。ごめん」
「呆れた。何て幼稚な発想なの」

キャサリンは怒って見せたが、彼に帰って欲しくなかったと言われて、むしろ嬉しい。

「僕も、我ながらそう思うよ。でも、部屋に戻らなくて良かっただろう?」
そう言って、マックスはにやりと笑った。

――なによ、全然反省していないじゃない。
キャサリンが呆気にとられていると、部屋の呼び出しが鳴った。

マックスはベッド横のテーブルにある電話を取る。
二言三言話して電話を切る。
「君の服が届いたよ。僕が取ってくる」
そう言ってベッドルームを出て行った。

キャサリンは、昨日着ていたTシャツを広げてみた。
服は渇いていたが、右胸のところがシャンパンで少し染まっている。
これでは着ることができない。
キャサリンは諦めて服をたたんだ。

マックスは紙袋を持ってすぐに戻って来た。
どうやら、新しい服を用意してくれたらしい。

「はい、君の着替え」
「どうしたの、それ?」
キャサリンは、これも疑問に思っていた事を聞いた。
「バトラーに昨日、今朝持ってきてもらう様に頼んでおいたんだ。君に必要だと思って」

マックスは平然としている。
つまり彼は、昨日こうなる事を予想して、わざわざホテル側にまで手配をしていたという事だ。
シャンパンを用意し、服を隠し、朝には服が届く。
何と用意周到なんだろう。

なんだか彼に嵌められたような気がするが、彼に対する気持ちに気付いた今は、不快では無かった。
むしろ嬉しい。
彼に、それを悪びれた風が一切無いからかも知れなかった。
一体いつそんな事をしていたのかと思うが、もう彼を問い詰める気は無かった。

だが彼女は、心の中でぼそりと呟いた。
――手回しのよろしい事で・・・。

「何か言いたそうだね?」
マックスは、紙袋をキャサリンに手渡しながら言う。
彼女はマックスの鋭さに、おや、と思う。

「別に。服、ありがとう。クローゼットを借りるわね。着替えて来るわ」
キャサリンは素っ気なく言うと、クローゼットの中に消えた。

マックスは、彼女の素っ気なさが少し不満だった。
彼女にもっと喜んでもらえると思っていた。
普通、女性はこういうサプライズを喜ぶものだと思っていたが、彼女は何が気に入らなかったんだろう、と思う。

――バトラーに頼んで買ってきてもらったのが、悪かったのかな。
マックスは自分の手で直接買ってこなかった事が、彼女の機嫌を損ねているのかと考えた。
だが、時間も無かったし、独りで下着を選ぶなんてできる筈が無い。
彼は首をかしげた。
しかし、キャサリンが普通の女性とは違うんだ、という事は理解できた。

――これからは気を付けよう。
彼は、そう思った。



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