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02.06
Wed
2人は謎(?)のキュートなピザ宅配人の素性を、勝手に想像し合って盛り上がった。
最終的にピザ宅配人は、宇宙から地球偵察に来たがUFOが壊れてしまって帰れずに、修繕費を稼いでいる哀れな宇宙人だということにされてしまった。

ピザを食べ切り、ワインを1本空けて、2人はマンハッタンに出かけようと言っていたことを思い出した。
ナタリーとの会話に元気づけられて、キャサリンは最初の暗い気持ちを忘れて出かけることに決めた。
スティーブと別れてからこの3週間は仕事に没頭してきた。
そのことを考えたくなかったし、独りで家にいる時間がいやだったのだ。

まぁ実際に、5ヶ月前に入った女の子が未だに目が離せられず、彼女の仕事を手伝う羽目になっていたせいもあるが。

しかしそれ以外にも、キャサリンには親友にも打ち明けていない大きな悩みがあった。
こんな風にナタリーと遊びに出ることも、しばらくはできなくなるかも知れない、と彼女は思った。

2人はジーパンにカットソーというくつろいだ格好だったので着替えることにし、キャサリンはナタリーに服を借りることになった。仲の良い2人は昔から服やバックの貸し借りをよくして来た。
ナタリーはキャサリンより胸が大きいので、キャサリンは合う服を選ぶのに少し苦労したが、2人はきゃっきゃっと学生のようにはしゃぎながら、試着パーティーを楽しんだ。







マックスはライトアップされた樹木と、きれいに刈り込まれた植栽で彩られたアプローチを抜け、高層ビルの大理石の柱の前でマウンテンバイクを降りた。
その大きな柱に取り付けられたガラス扉の前に立っている守衛に、挨拶をする。

守衛はマックスの顔を見ると会釈をし、大きなガラスドアを開けた。
彼は190cmほどある長身の体で愛車のマウンテンバイクを引っ張りながらビルのエントランスに入ると、瀟洒な装飾の施されたエレベーターの前でボタンを押した。

そのままバイクと共にエレベーターに乗り込むと、カードをあてて最上階へ向かう。
エレベーターが到着するとそこは広いホールになっていた。
ホールにはモダンな机と椅子が3セットほど置いてあり生花も飾られていて、ホテルのロビーのようだ。

このマンハッタンにある高層ビルは、中層階までが事務所等の賃貸になっており、上層階は住居エリアになっている。
その最上階のフロアの半分が彼の住居だった。
ホテルのロビーのようなスペースは最上階に住む2組のためだけのものだ。
ちょっとした来客にはここで応対できるようになっている。

彼はバイクを引いたまま机と椅子の横を通ると、小さなカードを機械に当て、両開きドアを開けた。
センサーが反応して玄関の照明がついた。
そしてやっとマウンテンバイクを壁に立てかけると部屋の中に入っていく。

そこは60㎡程の広さのLDKで、天井は恐ろしく高い。
正面には、セントラルパーク越しの夜景を見下ろすために3mを超す大きなガラス窓がはめられている。

マックスは見慣れた夜景には目もくれず、広いリビングにぽつんと置いてあるパソコンの電源を入れると、メールをチェックした。緊急を要するものが無いかさっと目を通す。

――大丈夫だな。
メールを確認し終わると、シャワーを浴びるために浴室へ向かった。

――さっきは驚いた。まさかキャサリン・パーカーと再会するとは。
  もっとも、彼女は僕が誰だか気づいていなかったけれど。

マックスは彼のブラウンの髪を覆っていたニット帽を脱ぐと、
脱衣所に備え付けられている大きな鏡をその青い瞳で覗き込みながら思った。

――分かるはずは無いか。
彼女に会ったのは3年前のことだし、誰も僕がピザの配達をしているなんて思うはずが無い。
それに、ピザ配達のアルバイトをしている時はなるべく帽子を目深に被って顔を隠すようにしている。

今まで素性がばれたことは無かった。



彼女とは3年前に、彼女の勤めるウィンターズ&マッカラン法務事務所が主催するパーティーで会っている。確か、その事務所の設立20周年記念パーティーだった。
マックスは、直接その事務所に仕事を依頼している訳では無かったが、当時付き合っていたモデル女性の事務所がウィンターズ&マッカラン事務所と顧問契約を結んでいて、彼女のパートナーとして参加したのだ。

キャサリンはそのパーティーの裏方として、パーティー全体を取り仕切っていた。
多くの女性がフォーマルできらびやかなドレスを着ている中、彼女は裏方らしく地味なスーツを着ていた。

だがマックスはなぜか、ふと気が付くと彼女を目で追っていた。
パートナーのモデル女性に強引に参加させられたパーティーだったせいで、退屈をしていたためかもしれない。
パーティーの間中、彼女はキッチンと受付と会場を行き来し、スタッフにこまかくに指示を出し、彼女の雇用主であろう主催者に来賓の情報を的確に提供していた。有能な女性だと思った。
その動きには無駄がなく物静かで、会場の雰囲気や来賓の会話を邪魔しないように計算されていた。

マックスがパートナーの女性と、パーティーの主催者(誰だっただろう、名前は忘れてしまったが)から話し掛けられた時、彼女はその主催者に失礼を詫びながら何かを報告しに来た。
彼女が報告を終わって去ろうとするとき、マックスはつい、彼女は誰なのか、と主催者に聞いた。
すると主催者は彼女を呼び止め、マックスに紹介をした。

彼女は仕事のできる女性の誰もがするように、淡いブロンドの髪をきちんとまとめ上げていた。
そして仕事のできることを主張するように、黒いまつ毛に縁どられたヘーゼルナッツ色の瞳でまっすぐマックスを見つめて自己紹介をした。

キャサリン・パーカーです、はじめまして、と。

マックスは、彼女が自分の名前を言うために薄いピンクの口紅を塗った唇を開いた時に、何故か、この形のいい唇にキスをしたら甘いだろうかと思った。
そしてその自分の考えに驚いた。
まさか、初対面の女性にそんなことを思うなんて。マックスは自分に舌打ちをした。

しかし彼女に自己紹介をしている間、彼女のまとめ上げられたブロンドをほどいて降ろしたらきっと彼女に似合うだろう、と思うことを止められなかった。
彼女は挨拶が済むと営業スマイルをマックスと彼のパートナー、主催者に向け、邪魔をしたことを詫びて、何事も無かったようにその場を去って行く。

マックスはパーティーも終盤に差し掛かったころ、彼女と少し話をしてみたい気がして彼女を探した。

彼のパートナーであるモデル女性は他の来賓と話し込んでいる。
仕事のコネを得ようとでもしているのだろう。

すると、受付とキッチンとのちょうど中間あたりの会場の端で、壁にもたれながら黒髪の男性と談笑している彼女が目に入った。
彼女は先程までの隙の無い雰囲気と打って変わって、打ち解けた表情で隣の男性に話しかけている。
マックスには彼が、彼女の恋人であることがすぐに分かった。
2人の周りには恋人同士が持つ独特の空気が漂っていた。

心臓のあたりがざわついた気がした。
マックスは話し掛けるのを止め、その後のパーティーをそつなく過ごすと会場をあとにした。


パーティーの翌日、いつものようにパソコンを前に遠隔地の支店とネット会議をした後、少し時間ができた。ふとマックスは昨日挨拶をした、有能な淡いブロンドの女性を思い出した。

ちょっとした興味から、マックスはキャサリン・パーカーの名前をキーボードに入力してみる。
彼女はSNSをやっている訳でもなく、すぐには情報に行き当たらなかったが、IT会社を運営するマックスには、目当ての情報を探し出すのは造作も無いことだった。

彼の従順な僕(しもべ)であるパソコンの画面には、彼女の経歴と年齢が程なく表示された。
現住所や連絡先は載っていない。マックスは年齢の欄をみて驚いたのをよく覚えている。
昨日の彼女が5つも年上とはとても感じられなかったからだ。




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