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03.24
Sun
「意外ね、IT企業の経営者って・・・」
マックスがドアにカードキーを差し込んでドアを開ける間も、彼女は彼に話し掛けていた。

「自分を常に検索して、自己満足してる?」
彼は言いながら彼女をどうぞ、と恭しく促す。

「そういうつもりじゃ・・・、まぁ、すてき!」

促がされて部屋に入ったキャサリンは、声を上げた。
真っ暗な部屋の向こうの窓越しに、シンガポールの夜景がきらびやかに輝いている。
彼女は美しい夜景に吸い寄せられるように、部屋の奥へと進んだ。

マックスは彼女の反応を見て、部屋の間接照明だけを点けた。
その方が夜景を楽しめる。

ダイニングテーブルにはカナッペとチョコレート、良く冷えたシャンパンがセットされていた。
マックスがブギス・ストリートにいる時に指示しておいたのだ。
彼はシャンパンを開けた。

シャンパンの開く音に、キャサリンは振り向いた。
視線の先には、吹きこぼれるシャンパンに慌てているマックスがいた。彼女はダイニングテーブルに近付くと、零れたシャンパンを拭こうとしているマックスを手伝った。
テーブルにはカナッペやチョコレートが置かれている。
夜景に夢中だったのと、部屋が暗かったために気が付かなかったが、洒落た演出だ。
彼が手配したんだろうと察した。

「大丈夫?」
「ありがとう、大丈夫だよ。実はシャンパンを開けるのに慣れていないんだ。良かった、たくさん零れて
 ていない」
マックスはボトルの中を確認する。

キャサリンは彼の洗練され過ぎていない行動に親しみを感じた。
「いつもは誰か、開けてくれる人がいるんでしょう?」
彼女はニッコリと微笑みながら言った。

「キャシー、誤解をしてほしくないな。僕は確かに色々なパーティーや会食に参加する機会も多いから、
 シャンパンを飲む事も多い。でも、プライベートで飲むことはほとんど無いよ」
マックスはそう言いながら、グラスにシャンパンを注いだ。

「本当に?」
キャサリンは海老やチーズ、この黒い粒々はキャビアかしら、と色々な具材の乗ったカナッペに目移りしながら言った。どれを食べようか悩む。
彼が、2つ目のグラスにシャンパンを注いでいるのが目に入った。

「君は、金持ちが皆、毎日の様にシャンパンを飲んでいると思っているんだろう? それはひどい偏見だよ。
 それに、どうやら僕の事も相当いやな奴だと思っている」
マックスは、シャンパンの入ったグラスをキャサリンの前に置いた。

彼女はマックスをチラリと見た。
彼はいたずらっ子の様に、にこにことしている。

――いやな奴だわ。
キャサリンは、金色に光る液体の中を昇って行く泡を見つめながら、思った。
彼は、ブギス・ストリートを離れる時にはアルコールを飲まなくていいと言っていたのに、今、彼女にシャンパンを勧めている。
もう一度、マックスをチラリと見る。
マックスは彼女が飲むことを確信しているのか、にこにことしたままシャンパンを一口飲んでいた。

素晴らしい夜景、素晴らしい部屋、シャンパンに高級なカナッペとチョコレート、そして素晴らしい男性、これだけ揃っいて、とろけそうにならない女性がいるだろうか。

そう彼は、自分の魅力を良く分かっている。
そして彼に惹かれているキャサリンの気持ちも。

彼は、アルコールが入ると少し奔放になる彼女の癖も分かっていて、お酒を勧めている。
つまりそれは、すべてを分かった上で彼女と関係をもう一度結びたいというメッセージだ。
それが、いやな奴以外の何だというのだろう。

「・・・いやな奴だなんて、思っていないわ」
キャサリンはシャンパンを、くいっと半分以上、一気に飲んだ。

マックスは、驚きながら彼女を見つめた。

「私は、一般論を言っただけよ。あなたをそういう人だなんて思うはずが無い・・・」
キャサリンは、欲望の宿る瞳で彼を見つめ返した。

彼の、周到に用意された罠に、飛び込んだ気がした。


「・・・そう言ってくれて、嬉しいよ」
マックスは喉の渇きを覚えて、もう一口シャンパンを飲んだ。
グラスを置くと、ダイニングテーブルの縁を回って彼女に近付く。

キャサリンには、彼が何をしようとしているのか分かっていた。

マックスは彼女のすぐ横まで来ると、キャサリンの頬に触れた。
観光で歩き回ったせいなのだろう、少し汗ばんだ彼女から、甘くさわやかな香りがマックスを誘う様に漂っている。

キャサリンの下腹部に、蝶が羽ばたく様な感覚が広がる。
「その・・・、性急過ぎない?」




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