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03.21
Thu
マックスは彼女の言葉を、驚きと喜びを持って聞いた。
それはつまり、彼女が大酒のみで、軽々しく男性とベッドを共にする様な女性では無いという事だ。
彼女は一度の過ちを反省し、そんな事を再度起こさない様にアルコールを断っている。
その相手は自分なので、少し複雑な気もしたが、彼女が彼以外の男とそんな関係を結んでいないという事、結ぶつもりが無いと言う事が、嬉しかった。

しかし彼女が今ここでその事を言い出すという事は、彼女が彼とであっても二度と同じ過ちを犯したくないと、躊躇している表れだ。

彼は、くすりと笑った。
マックスには、キスの時の彼女の反応と彼女が先ほど見せた熱っぽい眼差しで、彼女が彼を求めている事が分かっていた。
彼女を逃がすつもりなど無かった。

「じゃあ、君はアルコールを飲まなければいい。僕の部屋からシンガポールの夜景を見ながら、少しお
 しゃべりするぐらい、いいだろう?」
「でも・・・」

キャサリンは抵抗を見せた。
本当は彼の部屋にもう一度入ってみたかった。
彼の豪華な部屋から2人で眺める夜景は、きっと素晴らしいだろうと想像できる。

「君はいつも僕の言葉に反対するんだね、キャシー。せっかくの楽しい夜に、僕にあんなに広くてがらん
 とした部屋に、独りで帰れって言うんだね」
マックスは寂しそうに言う。

「・・・少しだけよ」
キャサリンは言葉を発していた。
マックスのそんな様子にキャサリンが抗えるはずも無い。

マックスは彼女の言葉に、にっこりと微笑んだ。

それからのマックスは素早かった。
ちょっと電話を掛けてくる、と言って彼女から離れたあと、すぐに彼女の元に戻ると彼女を連れてブギス・ストリートを戻った。大通りの反対側になるこちら側では、タクシーを捕まえるのは難しいからだ。

途中キャサリンに、足は大丈夫、と聞きながら2人が喧嘩をした場所まで戻ると、車が待っている。
彼はキャサリンを車に乗せた。





キャサリンはタクシーの中での沈黙に耐え切れず、マックスに話し掛けた。

「・・・やっぱり物件は、シェントン・ウェイの物に決まりそうかしら?」
「そうだね、最有力候補だね」
「あそこならこちらの希望を取り入れた改造を今から提案できるし、場所もいいんでしょう? 交渉次第で
 は他の条件も譲歩させることができるかもしれないわ」
「するどいね、ミス・パーカー。それに仕事熱心だ」
「・・・からかわないで」

キャサリンはマックスに褒められて、照れた。
世界的企業の経営者に褒められるのは、素直に嬉しい。

「君は、W&Mに勤めてどのくらいになるの?」
「そうね、8年ぐらいかしら」
「長く勤めているんだね、ずっとW&Mなのかい?」
「いえ、専門学校を出てから輸出入商品を扱う会社に勤めていたわ。そこから転職したの」

彼女は言って、この話題が続くと自分の年齢が彼にばれてしまう事に気が付いた。
今更ながらに自分の年齢を再確認し、彼に年齢を知られるのを躊躇した。
何といったって彼女は彼より5つも年上なのだ。

「へぇ、どうしてW&Mに?」
「何か特別な理由があった訳じゃないわ。前の仕事を辞めようと思った時に、たまたまW&Mが新しい事
 務員を募集していて、お給料も良かったから応募したの。そしたら受かって、あとはご覧のとおりよ」
キャサリンは話題が少し逸れた事に安堵した。

「じゃあ偶然、向いている仕事を見つけた訳だ」
「そうかしら、向いているかしら。あまり、自分では向いているっていう実感は無いわ。首にならない様
 に努力しているだけよ」
「やりがいは感じているんだろう?」
「・・・やりがいを感じていない訳ではないけど。誰もがあなたみたいに、天職に就く訳では無いわ」

キャサリンの言葉には少し棘が含まれていた。
マックスは片眉を上げた。

「天職? そうだね、僕の場合はそう言われても仕方が無いかな。自分が恵まれた環境だという事は認める
 よ。そして感謝もしてる。でも僕も、努力をしているだけさ」

マックスがそう言った時に、タクシーはホテル前に着いた。2人は車を降りる。
キャサリンは、彼が努力をしていると言った事が意外だと思った。
彼には努力など無縁だと思っていた。努力をしなくても、天賦の才能で楽々と人生を切り開いて来たのだと、決めつけていた。彼女は、自分の浅はかな考えを反省した。

「あなたが努力をしていないって、言ったつもりじゃ無かったの。・・・ごめんなさい」
「いいさ。誰もが思っている事だろう? 君みたいに面と向かって言う人は、あまりいないけどね」

ホテルのロビーを横切りながら、マックスは言った。
そんな彼に、彼女もついて歩きながら申し訳そうな顔をしている。
彼女の表情に、マックスの心につい、もう少し苛めてみたい気が起きる。





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