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03.18
Mon
キャサリンは恋愛経験が豊富ではない。
一人の人と長く付き合うタイプだったし、常に恋人がいる訳でもなく、長い期間、恋人がいない事もあった。仕事では堅物で通っていて、言い寄られる事はほとんど無いし、出会いも無い。
どうやら男性を寄せ付けない雰囲気を持っているらしいが、キャサリンはそうである事を歓迎していた。
仕事をする上で女性らし過ぎると、トラブルに巻き込まれる事が多い。そんな面倒は御免だった。
彼女は父のアルコール依存の時からの数年間、父の家のローンを支払わなければならず、仕事を辞める様な事は出来なかった。

だから彼が、ゲームと言った意味も分からなかったし、怒っている理由も分からなかった。
もちろん、彼が彼女に口づけした本当の理由も。
いや、マックスがキャサリンに何かしらの好意を持っているであろう事は、今までの彼の態度から察しがついてはいた。そんな事も分らないほど初心(うぶ)では無い。
だがその好意が、友人としての好意なのか、もっと深い意味での好意なのかが分からなかった。
彼女は彼にはっきりと言われて、やっと少し理解し始めた。

しかし経験不足と自信の無さから、彼女の思考は今回も、いつもの様に身を守る事を選んだ。

――まさかね。
彼女は彼がプレイボーイらしく、女性を喜ばせるコツを心得ていてそんな事を言ったのだと思った。
なにしろ彼の武勇伝は、ネットで検索済みだ。
しかし、彼の様な魅力的な男性にそんな事を言われるのは、とても気分がいい。
それに彼は、素直に謝っている。

「・・・いいわ、許してあげる」
キャサリンは、勿体ぶって言った。

「私、おなかがペコペコなの。ブギス・ストリートまで戻りましょう」
彼女は肩をすくめると歩き出した。

何故、マックスはさっきキャサリンにキスをしたのか。
その事は、とても聞けなかった。そんな冒険をするほど、傲慢でも自信過剰でも無い。
でも彼のキスと言葉に、心は歓んでいた。





2人は並んで歩いた。
ブギス・ストリートまで戻り、多くの店が並ぶ通りを歩いた。何ともカラフルな店が並び、通りは活気に満ちている。どの店も店の前から天井までずらりと商品を並べて、にぎやかに主張していた。
服を売っている店、靴を売る店、ジュースや食べ物、食料品を売っている店もあるし、アクセサリー店もある。

いい匂いがキャサリンの鼻をくすぐる。
彼女は匂いを発する店の一つに近付くと、店の前に並べられている食べ物の中からカレーパフなる物を一つ注文した。見た目は大きな揚げた餃子の様な形をしている。

「それ、おいしそうだね、僕も一つ」
マックスも店員に注文した。

「あなた、シンガポール社の社員と夕食を食べて来たんじゃないの?」
「夕食? ああ、あまり食べてないから、これぐらい入るよ」
マックスは店員からカレーパフを受け取りながら答える。

「そういえば、その夕食、どうなったの?」
「どうなったって?」
マックスはキャサリンの言葉に聞き返しながら、カレーパフを口に運んだ。

「だから、なんでこんなところに居るの? 食事が終わるには早すぎるでしょう?」
キャサリンは聞いた。
まだ20時になっていない。
夕食が何時から始まったか知らないが、終わるには早いだろうと想像できた。

「熱っ、でもうまい! 夕食は予定より早く終わったんだ。これ名前の通りカレー味だね、なんだろ、中に
 何が入っているのかな?」
マックスは社員たちとの夕食について短く答えた。
まさか、彼女の事が気になって切り上げてきた、とは言えない。

キャサリンはおいしそうに食べるマックスを見て、自身もカレーパフを口に入れた。
何しろ歩き回ってお腹が空いている。
「ん! 熱い。でもおいしい!」

キャサリンとマックスは、カレーパフをほうばりながら顔を見合わせた。
どうやら中にはジャガイモが入っている様だ。ぱりぱりに揚げてあるナンのような生地で、ごろごろとしたジャガイモの入ったカレー味の具が包んである。
キャサリンはカレーパフを食べながら、すぐ近くにあるジュースショップを見つけた。

「マックス、私、喉が渇いたわ」
唐突に言うと、ジュースショップの方に歩いて行く。
マックスは、彼の方を確認もせず進む彼女について行った。
彼女は店の前で悩んだ。

「うーん、どれにしよう」
何しろ、30種類ぐらいのカラフルなフルーツジュースが並んでいる。
これではなかなか決められない。

「ねぇ、どれがいいと思う?」
「どれって、飲みたい物にしたらいいじゃないか」
マックスは女性特有の悩みに呆れた。
自分の飲み物ぐらい、自分で決めてほしい。
それに、そういう時の女性は助言を求めているようで求めていないものだ。

「あなたは? あなたは要らないの?」
「僕? 僕はいいよ」
「そう、じゃあ、わたしは・・・ライムジュースね。すいません、ライムジュース、ひとつ」

キャサリンは店員にそう言うと支払いをしようとしたが、カレーパフを持っているため財布が取りだせない。するとマックスが、さっと横から彼女の分の支払いをした。

「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
マックスは答えた。

キャサリンはライムジュースを店員から受け取ると、一口飲んだ。
「おいしい!」
そう言ってから、またジュースを口に運ぶ。
「このジュース、爽やかで、熱いシンガポールにはぴったりね」

喉が渇いていたキャサリンは、ライムジュースをおいしそうに飲んだ。
マックスはその彼女の様子に、彼女の手からカップをひょいっと取ると、二口程飲む。
キャサリンは小さく、あっと言った。




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