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03.15
Fri
社員達は、自分たちのもてなしに彼が満足しなかったのかと、心配そうな顔を見せる。
マックスは、彼らのプライドと気持ちを傷つけないように、丁寧に言い訳をした。ミス・ヤンがホテルに送ると言ってくれたが、マックスは自分のせいで皆まで食事を中断することは無いと、断る。
外まで送ろうとする彼らを、ホテルにはタクシーで帰ると言って、その場での見送りだけに留めるよう説得し、挨拶を済ませ、やっとの思いで席を離れた。

マックスは店を出るとすぐさま、歩きながらホテルに電話を掛け、キャサリンの部屋を呼び出した。
彼女はなかなか、電話に出ない。
その間にオーチャードロードに出てタクシーを止め、乗り込むとホテルに向かう様に運転手に指示をする。
むなしくコールする呼び出し音に苛々としながら、彼女は何をしているのだろうか、もしかして出かけているのか、と思った。
彼は、くそっ、と悪態をつくのと同時に電話を切って、彼女の携帯に掛け直した。

悪い想像は、悪い想像を連鎖して連れて来る。
彼女が部屋に居ないとなると、食事に行っているのかもしれない。
マックスの頭には、キャサリンが誰か他の男に声を掛けられて一緒に食事を楽しんでいる姿が浮かんだ。
何しろ彼女は衝動的で、安易なところがある。
彼は自分の想像に、血が沸騰するように、カッとなった。

『もしもし?』
突然キャサリンが電話に出た。

「どこにいるんだ。部屋に居ないみたいだね」
マックスは彼女に苛々とした気持ちをぶつける。
彼が他人に対してそんな態度を取ることは珍しい。

『どこって、ブギス・ストリートよ』
電話の向こうのキャサリンは、悪びれる風も無く答える。

「ブギス・ストリート?」
思ってもいない答えに、マックスは当惑した。
『ええ』
マックスの責める口調に、彼女はそれが何か? と言わんばかりに返して来る。

彼はそんな事を気にせずに、携帯電話を少し離すと、運転手にブギス・ストリートはどこか聞いた。
運転手はすぐ近くだと答える。
マックスは運転手に行き先変更を伝えると、
「そこでちょっと待ってて。すぐ行くから」
そう言って、キャサリンの返事も聞かずに電話を切った。





キャサリンは、ラッフルズホテルでのショッピングを楽しんで、ちょうどブギス・ストリートに着いたところだった。ラッフルズホテルは本当に素晴らしかった。
まさしく白亜の宮殿、コロニアル調の建物には溜め息が出た。
まるで20世紀初頭にタイムスリップしたかの様な気持ちにさせる雰囲気の中で、完璧に美しいティーサロンで少し休憩をして、ロビーを見学し、博物館を回った。どこもすごい人だった。
ラッフルズのロゴの入った土産品をたっぷりと時間をかけて見て回り、何点か父やソフィア、ナタリーのために土産を買った。すっかりラッフルズに魅了されて、予定より時間をかけてしまった。

そのため、ブギス・ストリートに着いたのは予定より遅れて19時半を回っていた。
周囲は暗くなっていたが、もとより予定があるようで無い旅行だ。
今日中にサルタン・モスクに行く事は諦めよう、と思っていたところにマックスから電話が掛かってきた。
彼は何故だか分からないが、キャサリンが部屋にいない事を怒っている様だった。
そして、言いたいことを言うと電話を切ってしまった。

キャサリンはマックスからの電話を訝しんだ。
彼はこの時間、シンガポール社の社員達と会食をしているはずだ。
彼はすぐに行くから待っている様に彼女に言ったが、会食が終わるにしては早過ぎる。
すぐに来ると言ったって、何分後になるか分からない。
しかし、彼の言う事を無視する訳にもいかず、キャサリンはその場をあまり動かない事にした。
暫く待って来なければ、ブギス・ストリートの中に入ろうと思った。

――そうだ、サルタン・モスクまでの道順を確認しておこう。
彼女は、今日中に行く事は諦めたサルタン・モスクの場所を確認しようと考え、パンフレットに付いている地図を見る。

地図を見ていると、シンガポール人と思われる褐色の肌をした男性が声を掛けて来た。
彼女は警戒したが、彼はパンフレットを見ているキャサリンに、サルタン・モスクならあっちだよ、と親切に教えてくれる。
今日一日の出会いの経験から、キャサリンは警戒を解いて、その男性に道順を聞いた。




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