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03.09
Sat
翌日、キャサリンは朝7時に起きた。朝日が差し込んで部屋全体が明るい。
彼女は太陽の光を浴びながら起きたかったので、昨夜、カーテンを開けておいたのだ。
窓の外には、朝日を浴びてキラキラ輝く海に、多くの船が浮かんでいる。
海上は朝から船で、大混雑だ。

今日の予定は午前中に2件の物件確認と、午後からシェントン・ウェイのビルの開発計画の確認だった。
シャワーを浴びたあと朝食に出かけるつもりでシャワー室に向かうと、部屋の電話が鳴った。
彼女は、マックスだろうか、と思いながら電話に出た。

『おはよう、起きてた?』
やっぱりマックスだった。
彼女は、彼の声を聴いただけで弾んでしまった自分の心に、驚いた。

「おはよう、起きていたわ」
『よかった、起こしたら悪いと思ったんだけど、君の事が気になって。よく眠れた?』

彼が私の事を気にしてくれているとは・・・。彼女は嬉しかった。

「良く眠れたわ、ありがとう」
キャサリンは顔をほころばせながら言った。
表情がマックスに見えていなくて良かった。
見えていたら、彼からの電話を喜んでいるのが、彼に分かってしまう。

『体調はどう? 良くなったかな?』
「大丈夫よ。ぐっすり寝たおかげね」
『良かった。じゃあ朝食は一緒に取れるね』

マックスに言われて、キャサリンはそれまでの喜びと裏腹に、困った。
彼女は昨日の夜、今日はマックスと距離を置こうと決めていた。

「あー、ごめんなさい。これからシャワーを浴びようと思っているから無理だわ」
『もちろん、シャワーの後でいいよ。8時ごろならどう?』

彼女はますます困った。
シャワーを浴びても8時なら間に合う。
しかし彼にプライベートで会うと、決心がぐらつく。
何とか朝食は断らなければならない。

「・・・その、ごめんなさい。朝の内に会社にFAXしたり電話を掛けようと思っているから、無理ね。
 朝食は時間を見て独りで取るつもりなの」

嘘だった。
会社への電話やFAXは昨日のうちに済ませてあった。
彼からの誘いを断るのは辛かったが、仕方が無い。それにレストランでの無料の朝食も諦めなければならない。

『そうか、仕方ないね。残念だな』
「・・・ごめんなさい」
彼女は、本当に残念だと思いながら、必要以上に謝った。

『そんなに謝らなくても。仕事なんだから』
「・・・そうよね、じゃあ私、行かなきゃ」
『じゃあ僕は独り寂しく朝食を食べてくるよ』

――彼が独りで寂しい?そんな事、ある筈無いわ。
キャサリンは電話を切りながら思った。

きっと、スーツを着て長い脚を組みながら、ホテルのレストランで独りで朝食を取っている彼は、有能なビジネスマンとして、さまになっているに違いない。
そんな彼を誰が寂しそうだなんて思うだろう。

仕事中、彼は彼女の事をミス・パーカーと他人行儀に呼ぶ。
彼女も他に人がいる時は、彼の事をミスター・コナーズと呼んでいる。
だが彼は、プライベートでは彼女の事をキャシーと愛称で呼び、口調も親しくなるし冗談も多い。
彼の線引きのバランスの良さは、取引先の相手と仕事中に必要以上に親しくしたくないキャサリンには、非常に有難い事だった。

2人きりの時、彼女は、彼の口調につられて親しい話し方になり、同じように冗談も言ったり、時には彼に失礼な物言いをしてしまっている。
いくら彼が親しく話し掛けて来ていたとしても彼の様な立場の人間との関係において、本来なら彼女のそんな行為は許される事では無い。
だが、マックスはそんな彼女に怒らないどころか、変わらず優しさを示している。

彼は、そんな彼女の態度に怒って、彼女を首にすることもできる。
彼女は元々の性格と今までの経験から、自分の身の程をわきまえていたので、彼の寛容さと偉大さを身に染みて感じていた。
それは昨日の会食で決定的になった。
だから、図に乗ってはいけないと余計に思う。

――さあ、10時にミス・ヤンが迎えに来てくれる。
  それまでにシャワーを済ませてシンガポール観光の道順をチェックしよう。

今日は15時ぐらいからフリーになるはずだった。
レストランでの朝食を諦めて、朝食代わりにコーヒーを室内で飲むことに決めた。昨日の夕食が豪華だったので、今日はコーヒーだけでもいいだろう。
彼女はルームウェアを脱いで裸になり、朝日を浴びると、シャワー室へ向かった。




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