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03.02
Sat
「美しい建物ですね」
キャサリンの問い掛けにマックスは微笑む。
「うん、外観はいいね」
彼は、彼女の言葉に満足をしている様だ。
「ピピコムのイメージに合う?」
「その通り」
彼はにやりと笑った。

建物は外観も良かったが、案内された内観も良かった。2,500㎡で上層階の2フロアを使用できる。
今度は、マックスはくまなく内部を確認し、建物設計図も資料として取得した。しかし、次の予定が迫っていた。ミス・ヤンに時間を告げられ、3人は仲介業者の男性と別れた。

支社に戻るまでのあいだ、マックスはミス・ヤンと業務について話し合うほかは、無口だった。
キャサリンは、彼女に話し掛けようとしない彼に緊張した。
なので、彼が支社の前で車を降りた時には正直、彼女はホッとした。

彼女はそのままミス・ヤンにホテルまで送ってもらう予定だ。
その時、ミス・ヤンが大きく息を吐いた。その様子を見て、キャサリンは彼女も彼に緊張していたのだと分かった。

「緊張していたんですか? ミス・ヤン」
キャサリンは声を掛けた。
ミス・ヤンは目を見張りながらルームミラー越しにキャサリンを見ると、分かりましたか、と口を開いた。

「御免なさい、今あなたが溜め息をついたから、そう思ったの」
「そうですね、CEOの前では、つい緊張してしまいます。私、溜め息をついていましたか・・・」
「私も彼の前だと、緊張するわ」
「その様にはお見受けしませんでしたわ。その・・・、とても堂々となさっていて、CEOとはお親しい
 のかと」
「まさか! 手の震えを抑えるので必死よ。ほら」

キャサリンは彼女の緊張を解こうと手を大げさに振って、おどけて見せる。
ミス・ヤンはくすくすと笑った。彼女たちはホテルまでの道中で少し親しくなった。
キャサリンがシンガポールの観光名所について、彼女に聞き始めた時には、もうホテルに着いてしまった。

キャサリンは彼女にお礼を言い、ホテルへ入った。
ロビーは朝と違い、多くの人でごった返している。何人かの女性達が、中国の楽器を使って生演奏をしていた。

夕食まで時間があるが外に出かけるには中途半端だったので、キャサリンはロビーを少し散策してみることにした。

シンガポールはこの時期、雨期に当たるらしいが外は晴れている。
今朝この国に着いたばかりだが、もっと長く滞在している様な気がした。
キャサリンは観光パンフレットを見つけ手に取ると、ロビーの一角にあるお洒落なカフェに入り、コーヒーを飲みながらパンフレットを広げた。

ピピコム・シンガポール支社からの帰路で分かった事だが、ミス・ヤンは思ったより親しみやすい女性だった。この国に到着した時に空港まで迎えに来てくれていた彼女は気難しそうに見えたが、キャサリンの思い過ごしだったらしい。
その発見は、キャサリンには嬉しかった。
出張先の取引相手の従業員で、短い付き合いだとしても、キャサリンは無愛想でいるのは嫌だった。

パンフレットをめくり、シンガポールの観光名所を確認する。
シンガポールフライヤー、中華人街、リトルインディア、オーチャードロード、マーライオン、ナイトサファリ、セントーサ島、たくさんの観光地がある。
そしてもっとも注目の観光スポットはここ、マリーナ・ベイ・サンズだ。
キャサリンは、わくわくとしながら、どこに行こうかと悩む。

マリーナ・ベイ・サンズは今滞在しているし、今日の買い物である程度楽しめたので、古くからの観光名所である中華人街やインド人街に行ってみたいと思った。
それに、洗練された観光スポットより、東南アジア独特の雑多な雰囲気を楽しみたい。

明日は不動産の確認が午前中に2件入っていたはずなので、午後からの空いた時間に出かけることに決める。行き方については明日フロントに問い合わせよう、と考えて時計を見る。
そろそろ部屋に戻って夕食の準備にかかる時間だった。
キャサリンは部屋に戻った。

念願の可愛らしいバスタブにお湯を張り、ゆっくりと浸かり、シャワーを浴びた。
今日買ったばかりのドレスに身を包んで化粧をする。

19時まであと30分あるが、夕食がこのホテルのどのレストランか聞いていなかったので、キャサリンはマックスの部屋に電話を掛ける事にした。
フロントに彼の部屋番号を聞き、内線を使う。
何度か呼び出し音が鳴った後、マックスが出た。

「少し早いけど、夕食はどこか、伺おうと思って」
『ホテル最上階のレストランだよ』
「そう、最上階のレストランね。では、そこの前で落ち合いましょう」
『一緒に行こう。君はもう、準備できた?』

マックスの言葉に、彼女は躊躇した。
少しでも彼と一緒にいる時間を減らしたくて、レストラン前で落ち合う事を提案したのだ。

「・・・できているわ」
『僕はまだなんだ。・・・色々忙しくて。悪いけど、迎えに行けそうにないから、部屋まで来てくれる?』

彼の部屋はキャサリンより上層階で、きっと素晴らしく豪華に違い無かった。
キャサリンは興味があった。

「・・・分かった。今から行くわ」
答えて彼女は電話を切った。




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