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03.02
Sat
ミス・ヤンに案内されたピピコム・シンガポール支社は、オフィス街の一角にあるビルのワンフロアを占めていた。キャサリンは社内の小会議室へと案内される。
暫く待っていると、ドアがガチャリと開いた。

「やあ、お待たせ。じゃあ行こうか」
そう言って現れたマックスは、ジャケットを羽織らずに薄いストライプシャツと明るい色のズボンを履いていた。シャツには相変わらずネクタイをせず、首元のボタンを開けている。

ミス・ヤンと彼に先導されて、地下駐車場に着いた。
ミス・ヤンが車に向かって2人を離れた際に、キャサリンは彼に、バトラーを手配してくれた事のお礼を言った。

「買い物は楽しめた?」
彼は、歩きながらキャサリンに話しかけた。
「とても」
キャサリンも歩きながら答える。
「そう、良かった」
少し微笑んでマックスは言ったが、歩きながら彼女の方を見ずに答える彼を、キャサリンはそっけなく感じた。

3人は車に乗り込んだ。これから見に行く不動産物件まで、直接車で向かう。
ピピコム・シンガポール支社から走ること15分、目的のビルに着いた。
ミス・ヤンが仲介業者と携帯で連絡を取りながら、車をそのビルの地下駐車場に停める。

待っていた仲介業者の男性の案内で、3人はビルの中層階にある空っぽのフロアに着いた。
説明によると、約3,000㎡、3フロア分を賃貸できるという。他の階も見せようと仲介業者が案内しかけたが、マックスは彼に、建物のエントランスを案内させた。
4人はエレベーターで1階へ降りた。
建物ロビーを一巡して、マックスは建物外へ出た。彼は外をうろうろとしている。
建物の中に帰って来たマックスにキャサリンは声を掛けた。

「お気に召さなかったのですか?」
「うーん、希望に合わないな・・・」
マックスは答えた。

「では、もう一軒ご案内しましょうか?」
仲介業者の男性が声を掛けて来た。

「案内は1件だけの予定では?」
マックスが聞いた。

「一応、他の物件もご覧になるかと、案内可能な物をもう一軒ピックアップしてあります。少し遠いので
 すが」
「その物件はどこですか?」
「ここから30分程の場所にあります」
男性の答えに、マックスは腕時計をチラリと見た。

1件目の内覧があまりのも早く済んだので、次の予定まで時間は余っている。
「では、お願いしよう」
マックスは次の物件も見る事に決めたようだ。

仲介業者の男性から次の物件の資料を貰い、別々の車で現地まで行くことになった。
4人は地下駐車場に戻り、車を発進させた。

「どこがご希望に合わなかったんですか、ミスター・コナーズ」
キャサリンは来る時と同じ様に、後部座席で並んで座っているマックスに話し掛けた。

「立地と広さは良かったけど、少し建物が汚い感じだった。でも、気に入っていないってよく分かりまし
 たね、ミス・パーカー」
「・・・それは、他の階の確認もされなかったし、ロビーでもにこりともされていませんでしたから。そ
 うですね、資料では先ほどの建物は築年数が10年となっていますが、実際はもっと古い様な感じでし
 たね」
キャサリンは資料を確認しながら答えた。

「天井が低かったな。建物外観もいまいちだった」
「ピピコムのイメージに合わない?」
「そうだね」
「次の物件は、オフィス街からは離れる様ですけど、築年数はもっと浅いですね、築5年ですか。ですが
 オフィス街から離れると、従業員の方の利便性がどうなんでしょうね。シンガポールは車の乗り入れ規
 制があるようですし」
「良く知っているね」
マックスはおや、という様な顔をした。

「それは、一応、シンガポールの不動産条件について下調べして来ましたので」
キャサリンはさらりと答えた。

「さっきの物件の条件は、どうかな?」
「保証金が家賃の2ヶ月分、即入居可、1ヶ月の家賃も妥当ですね。原則2年契約、更新可能、シンガポ
 ールの商習慣としては妥当な物件かと思います。あら、共益費が別途かかるようですね。その金額の明
 記が無いわ」

キャサリンはマックスに試されていると思ったが、その事に反感は覚えなかった。
彼は取引先なのだから、初めて仕事を一緒にするW&Mの社員である彼女を試すのは当然だ。
彼女はこのために、今回の出張の前にシンガポールの不動産の情勢についてネットで調べたり、資料・関係法規の確認をして来ていた。
法務事務所の代表として来ているのだ。
キャサリンとしては、あたりまえの事だった。

「次の物件は?」
マックスは更にキャサリンに問いかける。
彼女は資料をめくると、答える。
「そうですね、約2,500㎡、保証金が3ヶ月分、これは法外と言えなくは無いですね。その他の条件は先
 程と同じで2年契約で更新可能、家賃に共益費等が含まれています。家賃は・・・、先程の物件より㎡
 当りは少し割高ですね」
キャサリンは、㎡当りの家賃を計算して答えた。
「なるほど。2,500㎡か。希望より少し狭いが、物件を見てみないと全体の印象は分からないな」

マックスの返答に、キャサリンは、自分の答えが彼のちょっとした試験に合格したのだと確信した。
彼女は自信を深めた。

程なく2件目の物件に着いた。
そのエリアはシンガポールの港に近かった。
建物は近代的で美しく、周囲に少しの駐車場と緑地エリア、地下駐車場を併せ持っている。




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