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02.28
Thu
シャワーを出るとルームサービスを頼む。
ホテルのレストランで昼食を食べようと思っていたが、時間がなさそうだ。
髪を乾かし、カジュアルな服に着替えてベッド横のカウンターテーブルに座ると、もう一度フロントに電話をする。フロントが応対すると、彼女は部屋番号と名前を言って、ドレスを買うためのお勧めの店を聞いた。14時30分にはミス・ヤンが迎えに来る予定なので、この広大な施設を店探しで、うろうろとしている時間は無い。
結局、マックスの提案はいつも正しい。

『お待たせ致しました、ミス・パーカー。ミスター・コナーズからそちらにバトラーを手配されておりま
 す。お探しのお店については直接バトラーがお伝えいたしますので、暫くお部屋でお待ちください』
フロントの女性は言った。

「バトラー? ミスター・コナーズが? その、そこまでして頂かなくても。 私は彼に、フロントに声を
 掛けたらお勧めのお店を教えて頂けるって聞いたんですけど」
キャサリンは彼女に、バトラーの手配を断ろうとした。

『しかし、ミスター・コナーズからのご依頼ですし、当ホテルのバトラーは、快適な滞在のサポートをさ
 せて頂けると存じますが』
フロントの女性は困っている。

キャサリンは、またマックスにやられた、と思った。
彼は、本当に世話好きだし、強引だ。しかしここで意地になって断っても、応対してくれている彼女を困らせるだけだと思い、バトラーの手配を受けることにした。
「分かりました。では、そのバトラーの方を待ちます。ですが少し時間が無いので、早めに来ていただい
 てもいいかしら」

電話を切って、TVのチャンネルを触っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
バトラーかと思い応対すると、ルームサービスだった。
チップを払い、サンドウィッチを食べた。食べ終わる頃にまた、ドアがノックされた。

「失礼いたします、ミス・パーカー。お食事はお済でしたか?」
さっきのサービスとは、服装の違う女性が現れた。

「ええ、済みました。あなたがバトラーの方ですか?」
マックスが彼と言っていたので、キャサリンはてっきり男性が来ると思っていた。

「はい、ジェシカ・コウと申します。お伺いになっておられたお店の件ですが、ミスター・コナーズから
 ご案内する様に申し付かっております」
「案内を、わざわざ? 全く、彼はなんておせっかいなのかしら!」
キャサリンは悪態をついた。

ミス・コウは少し驚いた表情をしている。
しかし、キャサリンは案内してもらった方が良いかも知れないと、考え直した。

「あの、本当はお店を教えて頂いたら自分で行くつもりをしていたんだけど、あなたがお勧めするお店に
 は、迷子にならずに行けそうかしら? 私、実を言うと迷子になっている時間が無いの」
「でしたらご一緒の方がよろしいかと。お出かけになられるご準備が整っておられましたら、ご案内致し
 ます」
ミス・コウは微笑んだ。
ちょっと待っていて下さい、とキャサリンは言って彼女に微笑み返し、バッグを取りに室内へ戻った。

彼女に先導されてキャサリンはショッピングモールへ出かけた。
キャサリンは行く途中、彼女から、このホテルの施設や規模についてたくさんの事を聞いた。ショッピングモールはホテルに隣接する別の棟になり、そちらのスケールも圧巻だった。モールの中央には大きな噴水があり、アジア風の船が浮かんでいる。
並んでいるショップはそうそうたる物で、誰もが知っているブランドが華麗に軒を並べていた。

しかし、キャサリンはドレスにあまり予算を掛けたくないと考えていた。
ドレスだけで無く、ドレスにあったバッグも必要なのだ。
キャサリンはミス・コウに、少し恥じらいながら予算と必要な物を伝える。
彼女は軽蔑する風も無く、キャサリンの予算と希望に合った物を揃える事のできる店を選んでくれた。

素晴らしいバトラーのおかげで、キャサリンはショッピングを短い時間で楽しみ、希望の物を買う事が出来た。彼女は黒いノースリーブワンピースを選んだ。ドレスに合う濃いグレーのクラッチバッグも買った。
帰り道の途中で、キャサリンはバッグの飾り金具と良く合うネックレスを違う店で見つけた。
連結されたスクエアにダイヤが散りばめられたデザインのネックレスは、大振り過ぎず、カジュアルシックというドレスコードにもぴったりだ。
だが、値段はぴったりでは無かった。
とても手が届きそうにない。

「着けて見られますか?」
ミス・コウに声を掛けられる。

「とんでもない。もう、ドレスとバッグで予算をオーバーしてしまっているもの。とても素敵だけど、
 ネックレスまでは手が出ないわ」
「きっと、良くお似合いになると思いますよ」
彼女はとても勧め上手なバトラーだった。

「でも、旅の前半でお小遣いを全部使ってしまう訳にはいかないわね。ありがとう」
キャサリンは、明日から売り子になってもやっていけるだろうミス・コウにお礼を言って、ショーケースの前を去った。
ネックレスは無しで辛抱しよう、と心に決める。

ミス・コウは部屋まで送ってくれた。
キャサリンは彼女に心の底からお礼を言った。
彼女が居てくれなかったら、キャサリンは目当ての物を買うどころか、迷子になっていただろう。

「私、バトラーの方って男性が来ると思っていたけど、来てくれたのが女性のあなたで良かったわ」
そう、同行してくれたのが女性のミス・コウだったからショッピングを楽しむ事ができた。

「ミスター・コナーズから女性のバトラーをご希望だと聞いておりましたので」
「ミスター・コナーズが?」
「はい。その様にご指示いただきました。ミス・パーカー、ご満足いただけて幸いです。では、私は失礼致
 します」

キャサリンはミス・コウにチップを渡し、再度感謝を述べた。
ドアを閉め、独りになると、マックスの手配の素晴らしさに感動した。
彼は何て気の付く人だろうと思った。
しかしそれは、それだけ女性の扱いに慣れているという事でもある。

そのことに気付くと、キャサリンを満たしていた幸福感が急速にしぼんだ。

――勘違いしちゃいけないわ。
彼女はまた、呪文のように心の中で言った。

ミス・ヤンが迎えに来る時間まで、あと20分程だ。
キャサリンはスーツに着替えるためにクローゼットへ向かった。




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