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02.18
Mon
キャサリンはジョンの部屋を退室して自分の席に戻ると、考えていた。
昨日、マックスがキャサリンにパスポートを持っているか、と問い掛けたのはこの事だったのだと確信した。そして、友人だと言ったくせに、彼の取る専横的な行動に腹が立った。

彼と出会ってから、キャサリンは彼に振り回されてばかりいる。
あの夜だって、彼は彼女にピピコムのCEOであることを隠していたし、ピザの配達人をしていたのも億万長者の気まぐれだったのだろう。確かに、酔って彼に迷惑を掛けたかも知れないが、彼は一夜の情事に彼女を利用したのかも知れなかった。
W&Mにやって来て彼女に気付き、口止めのために、自分は断ったなんていう嘘をついたのかも知れない。
昨夜のマックスの来訪で、納得し、彼は寛大な人物だと感じたキャサリンだったが、一夜経つと消化不良の疑問が頭をもたげていた。

そして今また仕事でも、彼の独裁に振り回されている。
彼が何故、シンガポール出張へ彼女を同行させるのか分からなかったが、彼女を困らせて楽しんでいるのかも知れない。

キャサリンは、これ以上億万長者の気まぐれに振り回されるのは嫌だと思った。
彼女は、やはり同行は断ろうと、決心した。
しかしジョンに言っても聞いてはくれないだろう。
キャサリンはマックスに直接断ることを思いついた。

ピピコムの経営者である彼に直接交渉をするのは気が引けたが、彼は彼女の事を友人だと言っていたし、してもいい様な気がした。
彼女はマックスの携帯番号を知らなかったので、ピピコム社に電話する事にした。

さすがに周りに同僚のいる自分の席から、ピピコム社にそんな電話を掛ける訳にはいかなかったので、彼女は手洗いに行く振りをしてオフィスを出た。
社外から帰ってきたW&Mの社員に会うといけないので、エレベーターに乗り建物の外に出る。
表の道路を歩きながら、ピピコム社に携帯から電話を掛けた。

『はい、ピピコム社受付です』
電話の向こうで、ピピコム社の受付女性が応対する。

「私、W&M法務事務所のキャサリン・パーカーと申します。そちらのマックス・コナーズCEOにお繋
 ぎ戴きたいのですが」
『CEOは現在、不在でございます。お電話があった事をお伝えいたします』
こんな電話が毎日かかってくるのだろう、受付は取りつく島も無く、CEOに連絡を取ろうともしてくれない。世界的企業の最高経営責任者にすぐに繋がるとは思っていなかったが、キャサリンは電話を待っている訳にはいかなかった。

「では、CEO秘書のアルバート・フランツ氏はおられませんか? W&Mのキャサリン・パーカーだと
 言ってもらえれば分かります」
先程の受付の様子だと、フランツ氏にも取り次いでもらえないかも知れないが、賭けるしかない。
『・・・少々お待ちください』

ピピコム社の製品を宣伝する保留音が鳴り、そのセリフも聞き飽きたと思うほど長く待たされたあと、ガチャっと電話を取る音が聞こえた。
『アルバート・フランツです』
キャサリンはホッとした。

「あの、W&M法務事務所のキャサリン・パーカーです」
『ああ、昨日の。どういったご用件でしょうか?ミス・パーカー』
「昨日はご来社有難うございました、ミスター・フランツ。突然のお電話で失礼しますが、御社のCEO
 に至急確認させていただきたい事があるのですが・・・」

キャサリンは受付からマックスが不在だと聞いていたので、フランツ氏には伝言を提案されると思っていた。
しかし伝言を頼める内容では無いし、伝言では遅くなる。
彼女はフランツ氏に、マックスの連絡先を聞こうと思った。

『ああ、CEOですか。生憎と今は会議中なのですが・・・、ちょっと待ってくださいよ』
そう言うと、彼は電話を保留に切り替えた。
受付に嘘をつかれたのだと気付き、あの女性にムッとした。

またもや長く待たされ、ピピコム社製品の宣伝を聞き飽きて耳を携帯から離していると、
『キャシー?』
と電話の向こうでマックスの声がした。
キャサリンは慌てて携帯電話を顔に近づける。

「あの、ごめんなさい。あまりにも長く待たされたものだから、電話を少し離していて。その、会議中だっ
 た様だけど、良かったかしら」
キャサリンはバツの悪さに、つい謝った。
そしてそんな自分に腹が立った。
彼女はさっきまでマックスに怒っていたはずだった。

『大丈夫だよ。いつもの定例会議だからね。君から電話があるとは嬉しいな。僕の声が聞きたくなった?』
彼女はマックスの言葉にドキリとしたが、遊び慣れた人間はこれだから困る、と思った。
彼の様な男性は、女性であれば誰にでもこんなことを言うのだ。

しかし、わざわざキャサリンにまでそんな事を言わなくてもいいのに、と思いながら、
「あの、お忙しいようだし、電話をした要件を言うわ。今日ジョンから、ピピコム社CEOのシンガポール
 出張に同行する様にと言われたのだけど、私、行けないわ」
と一気に言った。

『どうして?』
マックスはその質問が当然であるように、すぐに聞いて来た。
彼女は、断る事ばかりを考えていて、その答えを用意していなかった。




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