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02.14
Thu
ただ、彼が体の関係を迫ってこなかったことは、うろ覚えだが彼との素晴らしかった一夜を記憶していたので、少し残念なような気がした。彼は当初から、その事を全く言わない。
言わないどころか、逆に彼女が彼に迫ることを心配している。
彼にとって、彼女みたいな普通の女性との一夜は、うっかり起こしてしまったミスみたいな物かも知れない、と思うと胸が痛んだが、今は彼の寛大さに感謝するべき時だった。

「良かった、安心したわ。あなたが理解ある人で嬉しいわ」
キャサリンは彼に、心の内を悟られないように言った。

その彼女の言葉に、マックスは胸の痛みを覚えたが、少し考える素振りを見せて言う。
「キャシー、僕は君にさっき、あの夜の事は忘れるって言ったけど、その、やっぱり、何もなかった事に
 はできないと思うんだ。事実は事実として、僕は君と友人関係を築きたいと思う」

「・・・それは、どういう意味?」
「つまり、そうすると、その事を意識し過ぎてギクシャクすると思う。だから、お互い認め合った上で友
 人でいたい。ああ、心配しないで、そういう意味じゃないんだ。友達だったら何でも話し合えるだろ?
 そういう自然な関係でいたいってことだよ」
「それも、そうね・・・」

キャサリンは納得した。
確かにその方が今後、お互いにとって自然だろう。
それは、その事実を忘れたいと思っている彼女にとって受け入れ難い提案だったが、先ほど彼の見せた寛大さに報いなければいけない。

「オーケー、では、私にとっては恥ずかしいけど、あなたが良き友人として振る舞ってくれる事を望むわ。
 これから宜しく」
「もちろん、僕は良識ある人間のつもりだから、君の期待に応えるよ。こちらこそ宜しく」
マックスとキャサリンは改めて挨拶をした。

「ねぇキャシー、君、パスポート持ってる?」
マックスは唐突にキャサリンに訊ねた。
「パスポート? 持ってるけど?」
彼女は急に話題が変わったため、訝しんだ。

「ならいいんだ」
マックスは彼女の疑問には答えようとしない。
「どうしてパスポートを持っているか聞くの?」
キャサリンは、質問した。
「ん、ちょっとね」
彼はまだ答えようとしない。
「さっき、友人だって言ったわよね。友達なら答えてくれてもいいんじゃないかしら?」
彼女は、はぐらかすマックスに苛立ち、言った。

マックスは必死になる彼女に微笑んだ。
「いや、仕事の事だよ」
「仕事? 仕事でパスポートが必要になるの?」
「まだ確定じゃないから言えないんだ」
彼は、伝えられない事を残念そうに言った。

マックスにそう言われ、彼女は業務上オープンにしてはいけない内容に関係しているのかと思い、それ以上は聞かなかった。彼はピピコムの経営者なのだから、多くの業務機密を知っているはずだった。

「じゃあ、いいわ。マックス、あなたを許してあげる。これでおあいこね」
キャサリンはにこっと笑った。
彼の言った様に、自然に振る舞う事にしたのだ。
 
「あははは、全く、おあいこだ」
マックスは彼女の屈託のなさに感心し、笑った。
彼女が彼との関係を、自然な友達として構築しようとしている事が感じられた。
いい傾向だった。
そこで、もう一つ、さっきから気になっている事を質問することにした。
「キャシー、気に障ったら申し訳ないんだが、君はあんな事はしょっちゅうなのかな?」

「なんてこと! マックスあなた、なんて恥知らずな質問をするの!」
キャサリンはマックスの質問に、全身の血が駆け巡った。
彼女は怒りで立ち上がる。

「ごめん、質問の仕方が悪かったかな。その・・・、前後不覚になるぐらい酔う事っていう意味だよ。
 友人として君にこんな事がしょっちゅうあるのかと思うと、心配なんだ」
マックスはキャサリンのあまりの勢いに、釈明をした。

それでも彼女は腕を組み、ムッとした表情のまま彼の質問に答えずに黙っていた。
これにはマックスが焦った。
「だって心配して当然だろう? あの時は相手が僕だったから良かったけど、まあ、君にとって良かった
 とは言えないかも知れないが、他の男だったらどうするつもりだったんだ? もっと酷い目に合ってい
 たかも知れないし、強盗にあう可能性だってあるんだよ?」

キャサリンはじろりと、聞きにくい事を聞いてくるマックスを見た。
今までの会話で、マックスに対する警戒心は無くなっていた。
それどころか、彼は信頼できる人間だと思う様になっていた。
彼女は小さな声で言った。

「初めてよ・・・」
「えっ?」
マックスは聞こえず、聞き返した。

「飲んで記憶が無くなる事はたまにあったけど、その後、あんな事になったのは初めてよ!」
キャサリンは恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら言った。
言いたくない事を言わせるマックスに腹が立ち、大きな声になった。
マックスは、彼女の言葉と勢いに驚いて沈黙した。

「どう、好奇心旺盛なCEOさんはご満足? きっとあなたの会社の社員は、何でも質問されて困って
 いるでしょうね」
キャサリンは、ずけずけと女性に質問するマックスに腹が立ち、嫌味を言った。

だがマックスは、彼女のそんな嫌味など全く気にしていなかった。
それより彼女が初めてだと言った事の方が重要だった。

シャワーを浴びた後の突然の訪問客に、彼女はわざわざ服を着ている。
来客に変な誤解を持たせないためだろう。それは彼女が慎み深い性格だということを表している。
彼女が言う事は真実の様な気がした。

ならば彼女は、誰彼かまわず関係を持つような女性ではないと言う事だ。
つまり、飲んではいたがマックスとだから関係を持ったのだと言える。
さっきまで彼女が彼と望んで一夜を過ごしたのでは無いと知り、ショックを受けていたマックスの心は、希望を見つけた気持ちだった。

「そうだね、僕はしつこく質問しすぎる癖があるかも知れないね。きっと君の言うように、社員に
 嫌われていると思うよ」
マックスは心の底からニッコリと笑って言う。

マックスの笑顔と言葉に、キャサリンの怒りはすぐに収まってしまった。
彼女は彼の魅力に感心した。

「さて、君との会話は楽しいけど、僕はそろそろ帰るよ」
マックスは唐突にそう言うと、ソファから立ち上がる。
「それに君の髪は濡れたままだから、これ以上居ると、君に風邪を引かせてしまうかも知れないしね」
そう言って手を伸ばし、キャサリンの髪に触れようとした。

その仕草に、キャサリンはドキリとした。
彼女をじっと見つめる青い瞳に、吸い込まれそうになる。
そのまま彼の手は、髪に触れずにキャサリンの頬をなでた。
キャサリンの鼓動が早くなった。
キャサリンはキスをされるかと思った。

「マックス?」
キャサリンは狼狽えながら言った。

マックスは少し悲しそうな瞳をして、彼女から手を離すと、
「じゃ、行かなきゃ」
と言って、振り返らずに彼女の部屋を出た。

キャサリンは部屋の中で、さっきの彼の行動と表情の意味が分からず、呆然としていた。




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