--.--
--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

02.14
Thu
キャサリンの返事で、彼女がその事を覚えていない事がマックスには分かった。
彼は彼女を責めた。
「僕は酔っている君には、そういう事をしたくないって言ったよね・・・」
言って、言い過ぎたと思った。
女性にそんな事を言うべきでは無い。

キャサリンは断るマックスを自分から誘ったという事に、愕然とした。
その事は覚えていない。
だが、彼が嘘をつくとは思えなかった。
彼女は自己嫌悪に苛まれたが、彼に何故責めるかの様に言われるのか、理解できなかった。
彼女が覚えていなくて、彼には好都合のはずだった。
さっき、彼はその事は忘れて仲良くしようと言っていたではないか。
その事を理由に迫られるのは迷惑だと、言っていたはずだ。

「その、情緒不安定だったのよ。仕事とプライベートで、色々とあって、羽目を外して飲みすぎてし
 まったの。本当にあんなに飲んだのは久しぶりで・・・」
「スティーブと別れた事?」
マックスは彼女を責めたくは無かったが、その事が原因で、彼との事を忘れるぐらい酔っていたという事実が許せなかった。

さっき見た写真を思い出し、そんなにスティーブとかいう男の事が好きだったのか、と苦々しく思う。
彼女にどうしても嫌味を言ってしまう。

「どうして知っているの?」
キャサリンは、俯いていた顔をあげてマックスを見て訊ねたが、愚問だった。
彼女自身が言ったのだろう。
「・・・私が言ったのね」

「泣きじゃくってね」
彼はキャサリンに追い打ちを掛けるように、冷たく言い放った。
彼女はマックスに言われて、うっすらとではあるが泣いた事を思い出し、どうやら自分がマックスに大分迷惑を掛けた事に気が付いた。
ますます自己嫌悪になる。
彼が怒るのも当然の様な気がした。
そして、彼のそれまでと打って変わった冷たい様子に、思いのほか傷ついた。

「その、言い過ぎたよ。ごめん」
マックスは青い瞳を伏し目がちに泳がせると謝る。
彼は落ち込んでいる彼女の様子を見て、自分が言い過ぎたことに気付いていた。

「いいのよ。怒るのは当然ね。私、あなたに大分迷惑を掛けたみたいだし」
落ち込み続ける彼女を慰めたかったが、マックスにはまだ気になっている事があった。
言い過ぎた事を悪いとは思いつつ、彼は彼女に聞いた。

「・・・もう一つ確認したいんだけど、僕はあのあと、君と連絡を取ろうと思ってナタリーの所に行っ
 たんだけど、その事は知ってる?」
「それは・・・、聞いていないわ」
キャサリンは、許しを請うように、すがる様に彼を見た。
その事は本当だった。
そんな話は知らない。

「そうか」
マックスは納得した。
彼女の様子から、彼はキャサリンが本当の事を言っていると思った。
あの夜の事を覚えていないと正直に言った彼女が、嘘をつくとは思えない。

しかしこれで、彼女があの夜マックスと望んで過ごしたのでは無い事がはっきりとした。
今まで彼女を、一夜限りの遊びをする様な女性だとか、何かの事情で連絡が取れなくなっただけ、とは思っていたが、あの行為を望んでいなかったとは思わなかった。

彼女は今、何と言っただろうか、〝情緒不安定で飲み過ぎた、するつもりでは無かった〟と確か表現した。
道理であの夜を、無かった事にしたい訳だった。
彼女はマックスを望んだ訳では無かったのだ。

彼はその事実にショックを受けていた。
彼女はマックスに、男としての興味を持っていない。
つまり彼女にとって、あの夜はまさに間違いだったという事なのだ。
マックスはソファに座ったまま肘を太腿につけ、手を口元に当てて、深刻な表情で考え込んだ。

「マックス、本当にごめんなさい。その、そんなに迷惑を掛けたとは思っていなかったの。次の日逃げ出
 すような事をしてしまって、あなたの自尊心を傷つけたのは悪かったわ。でも混乱していたの、あれは
 間違いだったのよ。許してほしいわ、これから仕事で会う事もあるし、その、友人として」
キャサリンは彼の押し黙った様子に耐えられなくなり、言った。
マックスの体から発散される威圧感が増していた。
彼女は、彼が怒っていると思っていた。

キャサリンは、彼にとって一夜限りの関係なんてものは日常茶飯事だろうと考えていたので、翌朝置き去りにした事が彼の自尊心を傷つけたのだろうと思った。
だが彼に、怒りを持続させる訳には行かない。
彼は何と言ったって世界的企業ピピコムのCEOで、W&Mにとってかつてない利益をもたらす可能性のある大事な顧客だった。ここで機嫌を損ねる訳には行かない。
彼女は自分の行動に謝罪し、彼が彼女を許すように、彼が言った友人という言葉を使った。
彼の自制心に賭けなければならない。

「・・・そうだね、君はあの夜の事を覚えていない様だし、僕も忘れることにするよ。僕がここへ来た目
 的は、僕たちが和解することだ。僕たちは友人だよ、キャシー」

マックスは体を起こし、背もたれに凭れてキャサリンを見ると、得意の笑顔を浮かべて平静を装って言う。彼はショックを受けていたが、彼女を手に入れたい気持ちは捨て去ることができない。
彼女が、彼が取引先の経営者であるという事を過分に気にしている事は分かっている。

そして、彼はその地位を利用する事に遠慮をしなかった。
とりあえず2人の関係は、彼女が納得する友人という事にしておいて、その後のことは今後、対処すればいい。

「本当に?」
キャサリンは疑い深く訊ねる。
「本当に」
マックスは彼女を安心させるために、微笑み返しながら重ねて言った。

キャサリンはホッとした。
彼は彼女を罵倒し、今回のW&Mへの依頼を無かった事にもできたし、彼女に関係を迫ることもできた。
マックスは現在、彼女に対して絶大的な権力を持っていたが、彼はそれを行使しなかった。
彼は若いが寛大な人物だということが証明された。




>>次へ  >>目次へ


↓ネット小説ランキング↓   ↓アルファポリス↓
         
◆上記ランキングサイトにてランキング登録中。面白いと思ったら上のバナーをぽちっとな!よろしく!

関連記事

trackback 0
トラックバックURL
http://nicika.blog.fc2.com/tb.php/34-2d43102d
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。