--.--
--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

02.14
Thu
「マックス? あなた、どうして私の家を?」
キャサリンは咄嗟に疑問を口にしたがすぐに、マックスなら、そんな事を調べるのは簡単だろうと思った。
何しろピピコムの経営者なのだから。

「とりあえず中に入れて欲しいな」
マックスがドアの向こうから声を掛けて来る。

キャサリンは入れたくないと思ったが、入れない訳にはいかない。
さっきからドアのブザーを何度も押されているし、騒ぎになるのは嫌だった。
それに仕事で付き合いがある以上、彼を怒らせる訳にはいかないのだ。
彼女は玄関の防犯ロックを外し、ドアを開けた。

玄関の向こうに、今日W&Mで見た時と同じスーツを着たマックスが立っていた。
彼はどうやら仕事を終えて、そのままここに来たらしい。

今日事務所で見た時と同じ感覚がキャサリンを襲った。
彼は美しかった。
彼女はドアを開けた事を、すでに後悔していた。
開けずに帰ってもらうべきだった。

「コーヒーを貰ってもいいかな?」
彼はコーヒーショップで注文する様に、自然な調子で言った。

キャサリンは覚悟を決めた。
「いいわ、どうぞ」
そう答えて、彼を部屋の中に入れた。

キャサリンのアパートは築35年ほど経っており、間取りはミニキッチンとリビング、ベッドルームにバスルームが付いている簡単なものだった。壁には腰の高さまで板が張ってある。
室内の家具は必要最低限で、シンプルなデザインの物が多いが、所どころ可愛らしい色使いの置物やマットが使ってあった。
キャサリンはマックスをリビングのソファに座らせた。
ベーシックなデザインと色のソファに、ピンクやグリーンのクッションが置いてある。

マックスは、意外だなという思いと、やっぱりと言う思いの両方を持った。
彼女の仕事ぶりからすると意外だが、表情豊かなプラベートを知るとこういう可愛い物を選ぶのは彼女らしかった。
マックスの顔は自然にほころんだ。
それに彼女は、今までシャワーを浴びていたらしい。
玄関を開けた時の、まだ濡れた髪のままふくれっ面をしている彼女はセクシーで、マックスはキャサリンの表情の一つを新たに見れた事が嬉しかった。

コーヒーを待つ間、部屋の中を見渡した。
マックスはキャサリンに男の気配が無いことにほっとした。

だが、壁に貼られている何枚かの写真を見つけた。
写真に近づき、見る。
ナタリーと映っている物や、彼女に良く似た女性と高齢の男性と映っている物がある。これは家族だろう。
その中に黒髪の男性と2人で映っている写真があった。
見た瞬間にムッとした。スティーブに違いなかった。

「ちょっと、そんな勝手にみないで!」
コーヒーを持ってきたキャサリンが、慌てて言った。
コーヒーを机の上に置くと、マックスが見ていたスティーブとの写真を剥がしてチェストの上に伏せて置いた。
彼女はスティーブとの写真が貼ってあることを、すっかり忘れていた。

「彼氏?」
マックスは平然そうに聞いた。
「彼氏じゃないわ。もう別れたもの。さあ、コーヒーが飲みたかったのでは?」

リラックスした様子のマックスに対して、キャサリンは、彼がのんびりとしている理由が分からずイライラとしていた。
彼女はコーヒーを淹れている間、彼がきっとあの夜の事を話す為に来たのだろうと考えていた。
それならそうと、早く済ませてしまいたい。
それなのに部屋に入った彼は、今日事務所で見た時とは大違いにくつろいでいる。
まるであの夜、バーで話していた時のように親しげな雰囲気だった。
その事が彼女を苛立たせていた。

「ああ、いただくよ」
マックスは言うと、ソファに腰掛けた。
そしてコーヒーを一口飲んだ。

だが、キャサリンは立ったまま座ろうとしない。
彼には彼女が、彼が来たことに苛立っている事が良く分かった。
やはり彼女はあの夜の事を無かった事にしたいのか、とマックスは思った。

その事は彼にはショックだったが、認める訳には行かない。
彼が今夜キャサリンを訪れた目的は、彼女があの夜の事をどう思っているかを確認し、彼女との関係をマックスの望む方向へ持って行くことだった。
彼女との素晴らしい一夜を無かった事になど、するつもりは毛頭無い。

「僕が今日来たのは・・・」
「分かっているわ。あの夜の事ね」
マックスが話しかけると、キャサリンは彼の言葉を遮った。
彼女は、彼から何か言われる前に自分で答えを出してしまおうとしていた。
その方が楽だ。
その表情は苦悩に満ちている。

「その・・・、あの夜は、私酔っていたから」
キャサリンは先に言い訳をした。

マックスは彼女の言い訳を予期していたが、唐突な言葉についカッとなった。
「君は、あの夜の事をなかった事にしたいんだね。キャシー」
マックスの口から低く唸る様に言葉が漏れる。

キャサリンはハッと彼を見た。
彼の調子から、怒っていると思ったのだ。
彼の反応が気になった。
しかしもう既に彼の表情からは何も読み取れない。

マックスは一瞬見せた先ほどの表情から急に、にっこりと笑うと言った。
「大丈夫だよ。心配は要らない。僕も今日は君にプライベートを仕事に持ち込まない様に言おうと思っ
 てきたんだ」

キャサリンはホッとした。
さっき見たマックスの表情は見間違いだったのかも知れない。




>>次へ  >>目次へ


↓ネット小説ランキング↓   ↓アルファポリス↓
         
◆上記ランキングサイトにてランキング登録中。面白いと思ったら上のバナーをぽちっとな!よろしく!


関連記事

trackback 0
トラックバックURL
http://nicika.blog.fc2.com/tb.php/32-4a0306b0
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。