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02.14
Thu
マックスはそのあと、W&M経営者たちと商談の詳細について打ち合わせている間も、自分の思いに愕然としていた。
突然気付いてしまった思いは強烈で、否定などできなかった。
そのぐらい、その思いは啓示のようにマックスの身体を貫いた。

話が終わり、部屋を出た時に彼は、男性が親しげにキャサリンの手を取って話している場面に遭遇した。
マックスは嫉妬の炎が自分の中で燃え上がるのを感じた。
そのバカみたいな男は、彼女の手に触れながら彼女をランチに誘っている。
彼はそんなことを許しているキャサリンに、また怒りを覚えた。

――そうだ、彼女はそういうところがある。
自分の事は棚に上げて、彼は自分の経験から、彼女が押しに弱く、衝動的で、安易に男性の誘いに乗ってしまう女性だと思っていた。彼は、そういう事が起きないように、彼女を守らなければならないと思った。
彼女をどうしても手に入れようと、心に決めていた。


マックスは車の後部座席で、その場面を思い出し、苦虫を噛み潰したような表情になっていた。

「ミス・パーカー、なかなかきれいな方でしたね」
高級車をすべらかに運転しながら、アルバートが彼に話しかけた。
マックスは回想から頭をもどした。

「そうだったかな」
彼は、秘書が突然にそんな事を言い出した意味をなんとなく察していたが、話をはぐらかした。
「そうですね、どちらかと言うと、かわいい感じでしょうか」
アルバートは尚も続ける。
マックスは彼の秘書の気がつきすぎる性格に、舌打ちする思いだった。
それに彼は、見た目や普段の話し方からは想像できないが、遠慮が無い。
そこがまた、マックスのような人間にとって好ましいのだけれど。

「かわいい、か・・・」
マックスはとぼけた調子のままだが、アルバートの話に乗ることにした。
どうせ隠していたって彼の有能な秘書には、大抵の事はばれる。
隠す努力をするのは馬鹿らしかった。

「私の意見は、ですよ。ご安心を、私のタイプではないですから」
マックスはぬけぬけと言うアルバートをじろりと見た。
後部座席からなのでアルバートの顔は見えないが、きっとにやにやと笑っているに違いなかった。

――そうだな、彼女は万人受けするタイプではないかもな。
マックスは冷静に思った。
だが、彼にはとても美しく、年上だが可愛く見えていた。
特に彼女の笑顔は、堪らない。

「・・・そんなにバレバレだったかな」
マックスは、また窓の外を眺めながら言った。
平静を装ったつもりだったが、そんなにあからさまだったとは困ったものだ、と思う。
有能な秘書様の意見を聞く気になっていた。
「いえ、私も気づきませんでしたよ。帰り際に、彼女が他の男性と話しているのを見た、あなたを見る
 までは」

アルバートの言葉に、マックスは少し安堵した。
アルバートが気付かなかったという事は、他の誰も気付いていないという事だ。

彼は、時と場所によるが、感情がそのまま態度や表情に出るのは好ましくないと思っている。
経営者という立場上、それでは困ることの方が多いからだ。ピピコムが巨大企業に成長してからは尚更だった。他人にそれを求めるわけでは無いが、自分には厳しくそれを課していた。
そして、アルバートに気付かれた場面で、自分がどんな風だったのか興味が沸いた。
アルバートに聞いてみた。
「アル、僕は、どんなだった?」
「怖いぐらいに殺気立っていましたよ。彼女の横を通った時なんかは、彼女を睨んでいました」
「・・・参ったな」
マックスは自己嫌悪に陥った。

「あははは、殺気立っていたっていうのは冗談です。彼女を睨んでいたのは本当ですけど。それ以外で
 は、全く分からなかったですね。私の場合は、あなたがW&Mなんていう法務事務所を使おうと言い
 出した時点で、少しおかしいと思いましたし、ヒントがたくさんありました」
マックスは彼を落ち込ませ、それを笑った秘書に少しムッとしたが、アルバートはそんな事を意に介さず、マックスを慰めているつもりらしい。

アルバートはマックスに、他に人がいない時は今のような歯に衣を着せぬ物言いをする。
それは彼らが固い信頼関係で結ばれている証だった。彼らは雇用関係にあったが年代も近く、アルバートはマックスにとって、本音を言える数少ない友人でもあった。

「職権乱用だったかな」
マックスは自分の行動を省みて、反省をした。
その時はそれがベストだと思い決断したが、今考えると、感情に流されていたのが良く分かる。
それは、マックスが理想とする経営者にはあってはならないことだった。
特に恋愛に仕事上の立場を利用するのはもっての外だ。

「まあ、よろしかったのでは無いですか。法務について社外意見を聞くのは、いつもやっていることで
 すし、W&Mはなかなか優秀な事務所の様ですから。ダメなら、切ればいいだけですしね。それに、
 CEOは今までそういった事を仕事に 持ち込まれたことはありませんので、たまには、よろしいか
 と・・・」
「理解のある秘書でうれしいよ」
「いえいえ、あなたの彼女に花を手配したり、なんていう迷惑を今までかけられた事がありませんので、
 今後も無いと信じているだけです」
アルバートはマックスを慰めつつ、きっちりと注意もした。
注意をされてマックスは、やれやれ、と思いながら、また窓の外に目を移した。

彼の優秀な秘書は、暫く経ってから、マックスにまた声を掛けた。
「もうすぐ社に着きます。私はそのまま帰りますがよろしいですか?」
「ああ、僕は少し仕事をしてから帰るよ」
「・・・苦戦ですか?」
マックスは片眉をあげてアルバートの方を見た。
全く彼の秘書は気が付きすぎる、と彼は思った。

だが正直に話す気になっていた。
そして心の中を吐露する様に、ぽつりと言った。
「片思い、だろうな・・・」

それを聞いたアルバートは、車をマックス専用の駐車場に停めながら、マックス・コナーズにこんな事を言わせる女性がいるとは、と思った。




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