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02.14
Thu
キャサリンとソフィアはショックを受けた。
癌と言うには父は元気そうに見えた。
キャサリンの想像する癌患者とは、もっと苦しそうな人のことだった。
信じたくないし、父が苦しむ姿を見たくないという思いが働いた。
父に、本当なの、と問うと、まだ精密検査を受けていないので確実なことは言えないらしいよ、という答えが返ってきた。

〝精密検査の結果では肝臓癌じゃないことがわかるかもしれないってさ。まあ、酒を飲み過ぎたバチ
 が当たったんだよ〟
父は明るく言った。

娘達を心配させまいと彼なりの気遣いだったのだろう。
キャサリンとソフィアは、そうね、癌じゃ無い可能性もあるのよね、と答えた。

相談の結果、今度の父の診察にはソフィアが付いていくことになった。
その日、夕食を家族揃って食べてから、キャサリンはニューヨークへ戻った。

次の週の木曜日、ソフィアから父の診察の結果について電話があった。
やはり、父は肝臓癌だった。
父は当初から担当医師に強く告知を希望していたので、肝臓癌であることは父に伝えられた。
だが、余命と今後についてはソフィアだけに伝えられた。

ソフィアは電話の向こうで泣きじゃくりながら、医師から伝えられた、父が余命4ヶ月ぐらいであろうこと、今後進行が進むとどういう状態になるかを、キャサリンに話した。
キャサリンも泣いた。
希望は打ち砕かれた。
父をあと4ヶ月で失うなんて、とても信じられなかった。

その父の受診のあった週は、火曜日にナタリーから電話のあった週でもあった。
本当は金曜日に先約など無かったが、ナタリーに金曜日は無理だと言ったのは、木曜日にソフィアから父の病状について連絡が入るからだった。
病状の如何によっては、次の日にナタリーに会った時に平静でいられる自信が無かったからだ。

キャサリンの予感は悪い方に当たった。
ナタリーと会った土曜日、彼女は父親のことは親友であるナタリーにも伏せておいた。
あまりに衝撃が強すぎたし、まだナタリーに伝えるのは早いと思った。

しかしまさか、あんなことになるとは思ってもいなかった。
彼女は立て続けに起こった出来事へのストレスからお酒を飲みすぎて、素性の分からない初めて会った男性と一夜を共にしてしまった。
自分のした事の恐ろしさに、逃げる様にホテルを出た。
出てみて、そのホテルが5番街近くにある5ッ星ホテルだった事にも気づき、驚いた。
ますますマックスが何者なのか分からなくなり、混乱して急いでホテルの前を去った。

その日曜日、キャサリンは、本当はウィルクスバリに帰り、父を見舞おうと思っていた。
しかしもう飛行機の時間に間に合わなかった事と、二日酔いのせいで頭痛がしていたので、行くのをやめた。
父とソフィアには電話でそのことを謝った。
そしてアパートから一歩も出ずに、自己嫌悪に苛まれていた。

いくらスティーブの事、ローザの事、父の事、と精神的に参ることが重なったとしても、自分の取った行動は衝動的過ぎた。
それに、アルコールを取り過ぎたせいでマックスとの事は、うろ覚えだ。
うろ覚えだが、自分が今までに無く奔放だったことは覚えている。

――信じられない、最悪だわ・・・。
キャサリンは思わずにはいられなかった。
彼女は今までにこんな事になったことは一度もないし、したいと思ったことも無い。
魔が差した、としか言いようがない。
二日酔いのために起こる頭痛も、追い打ちをかける様にキャサリンの気分を低くした。

――大体、お酒を飲み過ぎたのが悪かったんだわ。
キャサリンは反省した。
そして、お酒を辞めることを決意した。マックスとの事も忘れ去りたかった。
元もと、どうせ半分も覚えていない。
それに彼に二度と会うことは無いだろう。
彼は得体が知れず、近づいてはいけない気がした。

ふぅっと、キャサリンはため息をついた。
そして、自分がそんな行動をしてしまった理由について深く考えた。
彼女が普段では有り得ないそんな事をしでかしたのは、精神的に参っていたせいに違いなかった。
自分では分からないが、それもかなり参っていたのだろう。

――私、自分で思っているより、張りつめていたのかも。それに、強くなかったのね。
キャサリンは考えていた。
そしてこの3週間で起きたことを思い返した。
そして父の事を思った。
ある決意がキャサリンの胸の中に芽生えた。


その次の週の水曜日、キャサリンはジョン・ウィンターズに辞表を提出した。
悩んだ結果だった。
お昼休みにジョンに時間を取ってもらった。
彼の部屋の彼の机にいつもの様に座りながら、ジョンは驚いていた。

「キャシー、まさかローザのことが原因かい?」
ジョンは眼鏡を外しながら訊ねた。
「いいえ、父が重篤な病気にかかったので、故郷に戻って面倒を見たいと思いました」
「お父さんが? 失礼でなければ、どういう状態なのか、教えてもらえるかな」
キャサリンは、父の病名と医師から言われた余命についてジョンに伝えた。
それは苦痛を伴う作業だった。

「・・・そうか、それは、つらいね」
その言葉は、ジョンは親しい人を失うつらさを今までの人生の経験から知っているのだろう、と想像させた。
同情とも慰めともつかない言葉に、むしろキャサリンは癒された。

ジョンは眉根を揉んで困ったように言った。
「キャシー、君に辞められるとW&Mは非常に困るし、辞めて欲しくないが、その理由だと、引き留め
 るのは酷だし、無理だろうね?」
「はい、すみません。よく考えた結果ですから」

キャサリンも困った表情で答えた。
実際、W&Mには長く務めたし愛着があり、辞めることを決断するのは辛かった。
色々あったが、ジョンやトビ―やオズやローザ、その他のみんなと会えなくなると思うと寂しかった。




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