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07.30
Tue
B&E教育事業(ブレンダン&エミリー・エデュケーション・プログラム)の2周年記念セレモニーは高級ホテルの広いイベント会場で行われた。

CEOの父親であるブレンダン・コナーズ氏によるスピーチがあり、CEOも短いスピーチをした。
今年の教育事業において優秀成績を収めた生徒が何名か表彰され、アルバートは将来ピピコムに入社するであろう、優秀賞に輝いた生徒たちの名前と顔を覚えておいた。
だが彼らが本当にピピコムに入社できるかどうかは、今後の大学進学後の状況による。
最優秀賞から10位までの生徒には、大学進学時の入学金および授業料に、その取った賞に応じてB&E教育事業団体から引き続き補助が与えられる。

しかし補助金は無条件で与えられるわけでは無く、取得には最低保証成績があり、たとえその年の最優秀賞を取ったとしても成績自体がそのラインを越えていなければ、補助金は支払われない。
また、入学後も毎年査定があり、それで落とされる事もある。
その他にも、ピピコム社に本人が入社すると同意した場合の補助金額と、同意しなかった場合では額に差があるなど、複雑で厳しいシステムになっている。

このB&E教育事業はアメリカ国内だけでなく、世界でも展開していく予定だ。
目下のところの海外初事業はインド。なぜインドかと言うと、インドは数年後には世界第一位の人口国となると予想されており、不思議とインド国民は数学に強いという文化を持っているからだ。
現在の教育制度でも優秀な数学者や企業経営者が出現しているインドで、更に裾野を広げた教育機関を設ければ、得られる人材の数は計り知れないだろう。

表彰式典が終わると、テーブルに簡単な食事が運ばれ、乾杯の合図で会食となった。
会食がひと段落するとステージで余興が始まる。

ざわざわと、広い会場に配置された各テーブルで話題に花が咲く中、舞台にラメの入ったジャケットを着た男性が現れる。
会場からはパチパチとまばらな拍手が鳴った。
そのラメジャケットの男性のあとから、お揃いの地味なパンツスーツを着た二人の女性が舞台に上がる。
どうやら、マジックショーが行われるようだ。

アルバートは、セレモニーが早く終わってくれればいいと思っていた。
CEOに言われて参加したが、こういう催しは退屈以外の何物でもない。
特に、秘書という仕事をする自分にとって、こういう場で客に交じって食事をするなど場違いだと感じる。
フレンチをアレンジした食事も、胃の調子が悪い今のアルバートには濃厚な物ばかりで、げんなりするだけだった。

アルバートはほとんど手を付けていない皿を前に、チラリと腕時計を見た。
まだしばらくセレモニーが終了するまでには、時間がある。
円卓の斜め向かいに座っているCEO夫妻は、楽しそうにステージを見ている。
こんな気分の時に、新婚の彼らを見るのは少し辛かった。

会場に大きなどよめきが起こって、アルバートがつられてステージに目をやると、ラメジャケットのマジシャンの前の空中で、小さな炎が上がっている。
何かを炎に包んで消したらしい。

後ろの方に佇んでいた助手の一人が彼に魔法のステッキを渡す。
仰々しく彼はステッキを振り、彼の前に置かれている四角い箱を叩いた。
そしてステッキを助手に渡すと、箱を開ける。
箱の中から、空中で燃えたはずの鳩が出て来て、飛び立った。
使い古されたマジックだが、会場は大いに沸いた。

飛び立った鳩は大人しくマジシャンの前に戻って、もう一人の助手が箱と鳩を引き取りに前に出て来た。

「!」


アルバートはその女性から視線を外せなくなった。
ハニー・ブロンドと緑の瞳、エヴァンジェリンだ。
見間違えようが無い。

そこに、髪をまとめて地味なパンツスーツを着たエヴァンジェリンが居た。
彼女は神妙な面持ちで箱と鳩を持って、そのままステージの袖に消える。

動機が激しくなり、頭痛が始まった。


「それでは次は、会場のみなさまにお手伝いいただきましょう」
マジシャンがマイクで会場に集まった人々に声を掛ける。

一度下がった彼女が出て来て、もう一人の助手と一緒にステージを降りた。

「誰か、私をお手伝いして頂ける人はおられませんか? 手を上げて」

マジシャンの掛け声とともに会場の中から手を挙げる者が現れる。





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