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07.18
Thu
「おい、ちょっと待てよ」

アルバートの発した言葉に、二人は昇りかけの足を止めて、胡乱(うろん)な目をして振り向いた。

「君、エディか? エヴァと、・・・エヴァンジェリンと一緒に住んでる?」
「・・・そうだけど、何?」

アルバートは信じられなかった。
エヴァンジェリンが言っていたエディという男は、明らかにゲイだ。
本当に一緒に住んでいるとは。
しかも、今から彼の恋人と部屋に戻ろうとしている。
という事は、エヴァンジェリンは彼がゲイだと知っている?
知ってて、付き合っている?

「どういう事だ? 君は、その・・・ゲイだろ?」

「何、あなた?! 失礼ね! ・・・もしかして・・・アルバートね?」
彼は、怒りを見せた後すぐ、驚いた表情をした。
そしてまた顔を、怒りに歪めた。
「あなた、今さら何の用事? エヴァをあれだけ傷つけて、6ヶ月も放っておいて、彼女どれだけ泣いた
 と思ってんの?」

「君は、バイなのか? エヴァと付き合ってるのか?」
アルバートはエディの言っている事を無視して、どうしても聞きたい事を口に出していた。

「はぁ? あんたバッカじゃない? 私は女とは付き合わないわよ! どんだけ無神経なの? ほんっとムカ
 つく! あんたみたいな最低な男、エヴァが待ってるとでも思ってんの? 彼女、あんたには二度と会わ
 ないって言ってたから。さっさと帰って!」

エディは怒りに顔を真っ赤にし、一気にまくし立てた。
エディ行こう、と彼の連れが声を掛ける。
エディはアルバートに、迷惑よ二度と来ないで!、と捨て台詞を吐いて階段を上がって行った。


――嘘だろ。

アルバートは呆然としていた。
彼女が男と住んでいるのは本当で、しかしその男はゲイで、女に興味が無い。
しかも、そのゲイの男性はアルバートと彼女の関係を良く知っていて、6ヶ月間連絡を取り合っていなかった事も知っている。
つまり、エヴァンジェリンとアルバートが普通に付き合っている時から一緒に住んでいる?
それをずっと彼女はアルバートに黙っていた?
しかも、彼女が今更の様にその事をアルバートが誤解する様に告げたのは、アルバートとどうしても別れたかったから?

アルバートは頭が混乱した。
すると、さっき二人に声を掛ける前までに考えていた、彼女の事を良く知っていないという事実が、重く暗い靄(もや)の様に心と頭を満たしていく。


まさか・・・、と頭を振りながら、アルバートは彼女の勤務先であるセント・ポーリアス医院の電話番号を調べるために、案内サービスに携帯で電話を掛けていた。
告げられた番号に即座に掛け直す。
呼び出し音のあと、病院の総合サービス案内の女性が出た。

「そちらに勤務されているエヴァンジェリン・ストウ医師をお願いしたい。ああ、専門は内科です」
アルバートは勤めて冷静に言った。

『少々お待ちください』
受付女性が答えて、保留音が鳴る。
馬鹿みたいに長く待たされている気がした。

『お待たせしました。エヴァンジェリン・ストウという医師は本院には勤務しておりません』
受付女性の言葉が、あまりにも冷酷に彼に刺さった。

「まさか・・・、エヴァンジェリン・ストウですよ?」
『エヴァンジェリン・ストウ、確かに勤務されていません』
「内科のはずです」
『いえ、内科でも他の科でも、その様なお名前の医師はおられません』
「じゃあ、看護師、看護師だったかもしれない。看護師で調べて頂けませんか?」

受付女性は明らかにムッとした調子を声に表した。
『あなた、いたずらなら他でやって頂戴。そんな女性、看護師にもいませんから』
そう言って、電話を切られた。

ツー、ツー、と鳴る携帯電話を持ったまま、アルバートは立ち尽くしていた。
こめかみの奥がキリキリと締め付ける様に痛む。


――嘘だろ。
アルバートは、それしか思えなかった。

彼女はセント・ポーリアス医院に勤めていない。
そう言えば、同僚とも会ったことは無い。
でも、夜勤だとか急な呼び出しが入ったと言って、会えない日があったのはどうなんだ?
そもそも、本当に医者なのか?
ついこの間まで、住んでいる場所も知らなかった。
男(ゲイだが)と一緒に住んでいる事も黙っていた。
名前だって、本当だろうか?
いや、それは、さっきの男にもエヴァンジェリンと名乗っているのははっきりしている。
だが、苗字は?
彼は今、苗字について言っていただろうか?
それに、偽名を使っているのかも知れない。
偽名を彼に名乗っているのかも知れない。
もし偽名だったら?
他が嘘だらけなのだから、名前だって、嘘の可能性が高い。

全てが、嘘、嘘、嘘。


――じゃあ俺が3年間付き合っていたのは、いったい誰だったんだ?


アルバートの頭痛は激しくなっていた。
元から灰色の街の色が、今はもう分からなくなっていた。







作者注:ゲイは男好きの男の人。バイは女も男もいけちゃう人。皆さんご存知と思いますけど、一応。




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