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02.10
Sun
「・・・ごめん、痛かったんだね。そんなにきつく掴んでいたかな?」
「いいえ、違うの。ごめんなさい。なぜか分からないけど、急に、悲しくなって。なんだかおかしい
 わね、私」
キャサリンは所どころ詰まりながらそう言うと、溢れ出そうになる涙をこらえようと目を押さえた。
「大丈夫?」
マックスはキャサリンの手に手を重ねたまま優しく訊ねた。

「ええ、大丈夫よ」
そうは言ったが、キャサリンは呆然とした表情をしている。涙は止まったようだ。
そして、カウンターチェアに座ろうとしてよろめいた。

「もう帰った方がいい、いいね」
マックスはキャサリンに言った。
キャサリンはおとなしく頷いた。

彼は、キャサリンを店の入り口付近のテーブル席に連れて行き座らせると、席を離れた。
しばらくして戻ってくると、アルコールのせいでふらふらしているキャサリンを支えながら店を出る。

タクシーをすぐに捕まえると、キャサリンを乗せて、少し悩んでから自分も乗り込んだ。
タクシーは走ったと思ったらすぐに停まる。

「おいで」
マックスに支えられながら、キャサリンはきらきらと輝く建物の中に入った。
彼は黒いスーツの男性に二言三言話しかけ、明るいロビーを抜けてエレベーターに乗る。
恐ろしく長く乗っていたように感じられたエレベーターから降りると、彼女は彼に引かれるままに部屋に入った。そこは、とても広く豪華な部屋だった。

「まあ、すごく素敵な部屋」
キャサリンは、さっきまでの涙はどこへ行ったのやら、笑い上戸に戻ってクスクスと笑いながら目を輝かせて言った。

「どうしてピザ配達人さんが、こんな高級そうなお部屋に住んでいるの?」
「ここは僕の部屋じゃないよ、キャシー。ホテルの部屋だよ」
「ホテル? でもとっても高価そうな部屋だわ。ただのピザ配達人が借りれるような値段じゃないでしょう?」
「まあ、スイートだからね」
「・・・スイート?」
「やれやれ、さっきまでは大人しかったのに急に元気になったね、酔っ払いさん。さあ大人しく座って」

マックスは彼女を3人掛けのソファに座らせると、ミネラルウォーターとグラスを取りにミニキッチンへ向かった。キッチンから戻ると、彼女は靴を脱いでソファに横になって目を閉じている。

「キャシー、こんな所で寝ちゃいけないよ。それに水を飲んだ方がいい。さあ」
マックスはグラスに水を注いでテーブルの上に置くと、彼女を起こそうと屈みこんだ。

「眠ってなんかいないわ」
彼女は重そうな瞼をゆっくりと開けながら言った。
身体を起こそうとしたが、力が入らない。ぐらりと身体が揺れた。

「大丈夫?」
マックスがキャサリンの体を抱きかかえるように支える。
顔と顔が近づいた。
2人の間に、バーでの時のような緊張が走った。

キャサリンはバーでの時のようにマックスの首に腕を回すと、にっこりと笑った。
「私、考えていたのよ。マックス、あなたはきっとジゴロなんでしょ?」
「ジゴロ?」
「だって、こんな高級そうなスイートなんて普通のピザ配達人に借りられるわけはないし、それにあなた、
 とっても女性に優しいもの」

まだアルコールの抜けていないキャサリンは相変わらずニコニコとしているが、至って真剣だ。
今度はマックスがくすくすと笑う番だった。

「さあ、僕を困らせてないで早く水を飲んで」
マックスはキャサリンの腕が首に回ったまま、彼女の体を軽々と起こして座らせた。
キャサリンとマックスはソファで向い合って座る形になった。
「でもマックス、私はそんなにお金を持ってないわよ」

彼女はまだ、マックスがジゴロだという話題を変える気は無いらしい。
彼女が酔っているのは分かっていたが、マックスは、彼女が3年前に会っていることを全く覚えていず、彼のことを女性からお金を得て生計を立てているジゴロなんかと一緒にしていることに、腹が立った。
全く、彼女は癪に障る女性だ。

「お金のためじゃないよ」

マックスは真剣なまなざしで彼女を見つめた。
そんなことをしなくても、マックスには計り知れない資産があるし、きちんとした仕事もしている。
もちろん彼女は知らないが。

「じゃあどうして?」
彼女は不思議そうに聞き返す。




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