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05.19
Sun
――衝動、的?

「マックス、あなた私を、そんな女だと、思っているの?」
キャサリンの瞳が揺れる。

マックスはキャサリンから目を逸らした。
「・・・言い過ぎた」

「そう、思っているのね」
キャサリンは、ぎりりと奥歯を噛みしめる。
マックスは否定しない。キャサリンの胸に黒い闇が広がった。
彼は、2人の関係の始まりの事を言っているんだろう。
初めて会ったマックスと、その日の内に身体を重ねたキャサリンを、そういう女だと言っているのだ。

「あなたは、それを利用したんじゃないの? そんな女で都合良かったんじゃないかしら。私が衝動的で、
 あなたも楽しめたでしょう?」

彼女はマックスを責めた。
キャサリンの中に仕返しをしたいという思いが沸き上がっていた。
彼女を貶めるのなら、彼も同罪だ。彼も貶めてやればいい。

「キャシー、僕は言い過ぎたと、言っている」
先程まで彼女を責めていたマックスの声は、絞り出す様に低く小さくなっていた。
彼から始めたこの言い合いを、自分が責められる側に回ると自ら止めようとしている都合の良さに、キャサリンの怒りに油が注がれる。

「言い過ぎた? 本音でしょう? 身分を隠して都合良く遊べる相手が欲しかったくせに、それに乗った相
 手をそんな風に言うなんて」
「僕は都合良く遊ぼうなんて、していない」
「さあ? どうかしら。あの時本当は分かっていたんでしょう? 私に会ったことがあるって、私がW&M
 の従業員だって、気付いていたんでしょう?」
「・・・気付いていたよ」
「気付いていたのに、なぜ、私に言わなかったの?」

キャサリンは彼の答えに、愕然とし、尚も声を荒げた。
なぜ彼は、その時、言わなかったのか。
なぜ、黙っていたのか。
やはり、都合良かったのだ。

「言おうと思ったけど、君が思い出すと思ったんだ」
「・・・忘れていた私のせいってこと?」

何と、彼は残酷な事を言うのか、とキャサリンは思った。

「キャシー、もう止めよう」
「全部、私のせいなのね。2人の関係が始まったのは私が衝動的なせいで、私はそんな女で、スティーブ
 にはっきり拒絶しないからあなたは腹を立てている」

「仕方が無いだろう! 君は、彼に言える事でも、僕に言わないじゃないか! 僕に君のお父さんの事を
 教えてくれたのか! 彼に心配を掛けても良くて、僕に心配は掛けれないのか? 君は僕を締め出して
 いる!」

キャサリンは言葉に詰まった。
マックスの言う通りだ。


「もう、いい」
マックスがふわりと頭を振る。

「もう、いい。・・・君はまだ、僕に教えてくれる気は無いらしい。君のお父さんに何が起こっているのか
 知らないが、もう、うんざりだ。君こそ、僕を信頼していない。どうぞ彼とよろしくやってくれ。君達
 には5年付き合った歴史がある」

彼の、それまでと打って変わった静けさと淡々と口から吐かれる言葉に、キャサリンは自分が言い過ぎたと理解した。

「違、う・・・。マックス、スティーブとは、そんな関係じゃ、無い」

マックスに謝らなければ、と思うが、キャサリンは、彼が今だに拘るスティーブとの関係についての不当な評価のせいで、胸に燻る怒りを上手く消す事が出来ずにいた。
だから、言うべき言葉を間違えた。

「止めてくれ、キャシー。君の口から彼の名前を聞く度に、はらわたが煮えくり返る」

キャサリンは、掠れた低い声を発するマックスを呆然と見つめた。
喉が張り付いて、言葉が出ない。

「悪いけど、僕は送れない。独りで帰って欲しい」

マックスはそう言って、悲しそうな瞳でキャサリンを見つめた。
その瞳は、鈍く光り、拒絶の色を伴っている。

キャサリンの身体はぴくりとも動かなかった。
この現実に、頭が付いて行かない。
マックスの言葉が理解できない。
自分が、何をすべきなのか、判断できない。
それでいてキャサリンは、マックスがいつもの様に彼女を許して、微笑んでくれる事を望んでいた。
自分の、収まり切らなくなった怒りの矛先を収めるきっかけを、彼が作ってくれる事を期待していた。

マックスの瞳がキャサリンから逸らされた。
彼の身体が翻り、強ばるキャサリンの前をすり抜け、歩く。

「あ、マックス?」

キャサリンは弱々しく声を出した。

「マックス」

彼の背中は彼女の言葉を跳ね返し、目の前の道路を横切り、セントラル・パークの中へ消えて行った。




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