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04.28
Sun
コン、コン、と半透明なアクリルガラスのドアをノックする音が聞こえた。

アルバートは立ち上がると、廊下に続くそのドアを開けた。
ドアの向こうには、有名カフェの制服を着た可愛らしい女性がコーヒーを持って立っている。

「あ、ありがとうございます。コーヒーをお持ちしました」
そう言って彼女は、少し頬を染める。

「ご苦労様です。受け取ります」
アルバートは彼女にニッコリと微笑んだ。

その女性は、さらに頬を赤める。

「あ、あの、ミルク、二つ分入れておきました」
彼女はそう言いながら、トレーを差し出す。

「ありがとう」
言いながら、トレーの上のコーヒーを受け取ると、湯気で眼鏡が曇った。

「あっ、眼鏡・・・」
「こういう時、眼鏡って不便ですね。少し、待ってくれますか?」

アルバートは彼女に微笑みコーヒーをトレーに戻すと、彼のアイスブルーの瞳を覆っていた薄いシルバーフレームの眼鏡を一旦外して、付いた湯気をスーツの袖で拭いた。
そしてまた眼鏡を掛け直す。
コーヒーを受け取りなおそうと目線を戻すと、彼女がじっと自分の顔を見ている事に気が付いた。
視線が合う。

制服の彼女はパッと視線を下に向けると、更に顔を赤らめた。

アルバートは、フッと口元をゆるませて言った。
「お待たせしてしまいましたね」

トレーの上のコーヒーを手に取った。

彼女は暫く下を向いたままモジモジとしていたが、急に上を向くと、失礼しました、と言ってくるりと背を向けて去って行った。
アルバートはドアが閉り切るのを見届ける。

――やれやれ、俺に気があるのが丸わかりだな。
アルバートはさっきの有名カフェの制服を着た女性に呆れていた。


彼は、社内にある社員用カフェを兼ねた有名カフェから届いたコーヒーをCEOに渡すため、自席の間と半透明な防音アクリルガラスで仕切られているCEO室に入った。
その部屋に入ると、長身のCEOは立って窓の外を見ている。
大きな窓の外には少し眼下に、NYのビル群とけばけばしい広告看板が広がっている。

彼がこんな風に外を眺めているのは珍しい。
いつもなら3台並んだパソコンの画面と睨み合いをしているはずだった。

「こちらに置いておきます」
そう言って、CEOの机にコーヒーを置く。
「・・・」
何も答えず背中を向けている彼に、見えないだろうが小さく会釈をし、部屋を去ろうとすると声を掛けられた。

「アル・・・、結婚について、どう思う?」

唐突な質問に、何を言い出すんだろう彼は、と思う。

「結婚、ですか・・・?」
アルバートは、困惑を口にした。

だがすぐに、若い上司がそんな事を言い出した理由に行き当たる。

「契約、離婚、手痛い出費と精神的ダメージ・・・、危険、ですね」

アルバートの言葉に、CEOは勢いよく振り向き、驚いた表情でアルバートを見た。

「契約、離婚、手痛い出費、ね・・・。なるほどな・・・、かなり悪いイメージばかりだな」
「いえ、悪いイメージばかり持っているわけではありませんよ。子供、あたたかい家庭、愛情も得られ
 ます」

上司はまたもや驚いた表情をした。
彼の、アルバートの瞳より濃いブルーの瞳が見開かれる。

――そんなに俺は驚くことを言ったか?
と、上司の反応にアルバートは思った。

上司であるマックス・コナーズは、長い脚をしなやかに動かし自分の机に近付くと、コーヒーを手に取り一口飲んだ。

「子供に愛、か・・・。アルがそんな事を言うとはね」
そう言って口元をほころばせる。

「一般論ですよ、全て。結婚を意識されているんでしたら、前述の事もお忘れにならず、ご慎重に」
アルバートはそう言って部屋から下がろうとした。

「・・・ん、肝に銘じておくよ」
CEOは彼の言葉に素直に頷くと、その長身の体を椅子に沈めた。
だが、その瞳はどこか遠くを見るようで、もう心はここに非ずと言った感じだ。

アルバートは彼のそんな様子に少し首を傾げた。
いつもなら、アルバートの辛辣な忠告の言葉に、ジロリと睨み返してくるはずだ。
そのつもりで、言ったのだ。

もう一度会釈をし、CEOの部屋を退室した。




作者注)アルバートは、黒髪、スカイブルーの瞳のドイツ系アメリカ人。マックスより身長は低いです。
    マックス190cm近く、アルバート180cmちょいかな。作中その説明文、入れ損ねました。
    (4/28追記)

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