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04.25
Thu
マックスは部屋に戻ると、広いリビングを見渡した。

スーツケースをリビングの入り口に置いたまま、白く大きなソファに腰掛ける。
頬杖を付いて、少し考えるような素振りをした後、ぱっと立って、リビングの端に置かれているパソコンを立ち上げる。そして、メールをチェックする。
これは、部屋に戻ったら必ず行う決められた行動。

パソコンから目を離すと、またリビングを見渡した。
すごく、部屋ががらんとしている様に感じる。
実際、吹き抜けを伴い、60㎡を超す広さの中に無駄な家具の無いLDKは、がらんとしていると言えばがらんとしている。
置かれているオーディオセットやソファも、白とダークウッドを基調にしていて、すっきりとシンプルなデザインだ。
シルバーのアイランドキッチンもピカピカと光ってはいるが、調理器具は少ししか無い。

部屋には、ハウスキーパーを1週間に3回入れているので、塵ひとつ無い。

マックスは、頭をくしゃくしゃと掻いて立ち上がると、リビング入口に置いたままになっているスーツケースを少し移動させ、開けた。
解放的なリビングとバスルームを繋ぐ短い廊下に、目立たない様に設置してあるドアを開けて、その中のランドリーボックスに服を全部、下着から何まで入れた。
こうしておけば、ハウスキーパーがクリーニングに出してくれる。

そのまま、今着ている服も全部脱いで、ランドリーボックスに突っ込んだ。
靴もそこに置きっ放しにして、裸でバスルームに向かった。
カーテンが空けたままになっているが、セントラルパークの反対側からでは見えるはずも無い。

シャワーを浴びながら考えた。
――彼女に会いたい。

シンガポールであれ程一緒に過ごしたのに、もう会いたくなった。

――これは恋だ。
そう思って、シャンプーを流しながらくすくす笑う。
分かってはいたが、あの国を離れたら少しは熱が冷めるかと思った。
しかし、冷めなかった様だ。

――突然行ったら、驚くかな。
マックスはキャサリンの驚く顔を想像して、またくすくす笑った。
驚いた後、彼女はきっとニッコリ笑うだろう。
〝まぁ、マックスどうしたの?〟そう言って。
その後、自分は何と答える?

マックスはそんな楽しいシミュレーションを頭の中でした。
そして、何か食べ物を買って行こう、ともう考えていた。






キャサリンがシャワーを浴びてリビングで、やっぱりアメリカのTV番組は面白い、などと思いながらTVを見ているとドアベルが鳴った。
TVのボリュームを下げて玄関に向かう。
「どなた?」と声を掛ける。

「僕だよ」
マックスの声がした。

予想しない来訪者に、キャサリンの心は震えた。
だが一瞬、キャサリンは開けるべきかどうか、悩んだ。
さっき彼に対する未練を断ち切ろるために、苦しんだばかりだ。
その躊躇いが、ドアを開ける手を止めた。

「マックス? どうしたの?」
ドアを開けずに聞いた。
彼が、来た。
彼が、会いに来た? 私に?
どくん、どくん、と心臓の跳ねる音が聞こえる。

「・・・君に、会いたくて」

ドアの向こうから聞こえるマックスの言葉に、全身が歓喜に震える。
ああ、彼は私に会いたいと言っている。
全身の毛が総毛立ち、背中から昇って首筋を上がって行く。
彼に掛かっている魔法は解けていなかった!

「早く開けてほしいな。食べ物を買って来たんだ」

マックスの言葉に、キャサリンの心は、先程の躊躇いをどこかにすっ飛ばして手を動かしていた。
ドアのロックに手を掛ける。
そして、心臓を落ちるけるために深呼吸をして、玄関を開けた。

そこには手に買い物袋を下げた長身のマックスが立っている。
「どうぞ」
と、彼女はニッコリと彼に微笑んだ。
彼に気持ちを悟られない様に、ずいぶんと控えめに微笑む。

「くつろいでた?」
マックスは、キャサリンの姿をじろじろと見ながら言った。

その彼の仕草に、キャサリンは自分がスウェットを着ていた事を思い出した。
しまった、と思う。彼が来るなんて思わなかったので、まったく色気の無い黄色いスウェットを着ている。
しかも、その恰好のまま玄関を開けてしまった。
億万長者の彼に、30過ぎの女のリアルな生活を見せてしまった。
マックスに少し待ってもらって、着替えるべきだった。大失敗だ。

「あ、あなたが来るなんて思わなかったから」
恥ずかしさに赤面した顔を彼から隠すために、急いでマックスに背を向けた。
「着替えて来るわ」

「いいよ、そのままで」
マックスはそう言って、買い物袋を持ったまま彼女を後ろから抱きしめた。
そして、キャサリンの頭にキスをした。
途端に、ぞくり、とキャサリンの体が跳ねる。

「君のお腹が空いているといいんだけど。ヌードルを買って来たんだ」
そう言ってまた、彼女の頭にキスをする。

――ああ、彼はなんて甘い。甘い果実の様だわ。
キャサリンは前に回されている彼の腕に触れた。
がさがさと、買い物のビニール袋がその甘い雰囲気に似合わない音を立てる。

「先に私を食べるのは、無しよ」
キャサリンは微笑み、マックスの言葉に負けない様に、冗談めかしながら甘い言葉を吐いた。

分かってるよ、とマックスは口を尖らせて部屋に入る。
2人はその後、一緒にテイクアウトの中華風焼きそばを食べ、お決まりの様にベッドに行った。



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