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04.18
Thu
「キャシー、お待たせ。行こうか」
「・・・あ、私、眠っていた?」
目を開けた時の暗さに、キャサリンは顔の上に乗せていたパンフレットを取った。
今度はまぶしさに目を閉じ、眉間にしわを寄せる。

「う・・・ん、どのぐらい眠っていたのかしら?」
「30分ぐらいかな」
「30分! 今、何時?」
彼女は身体を、ガバッと起こした。
「11時5分」
マックスの方を見ると、彼は机の上に出していたノートブックを片付け、その机に軽く腰を乗せてベッドの脇に立っている。

「もっと早く起こしてくれれば良かったのに。あなたはもう準備できたの?」
キャサリンはベッドから降りて、大きく伸びをして言った。

「できてるよ」
そう言う彼は、何の荷物も持っていない。

「鞄とかは? 持たないの?」
「この格好に合う鞄を持ってきていないんだ。仕事用の鞄ならあるけど、おかしいだろ」

彼女は、彼のラフな格好に仕事用の黒い鞄を持っている姿を想像した。
「・・・おかしいわね。確かに何も持っていいない方がいいわ。でも、財布とか携帯とかどうするの?」

「ん、ここに入れた」
彼は自分のジーンズの、後ろポケットを指した。

「そんなの、危険じゃない? スリに会うかも」
「大丈夫だよ」
「だめよ、良くないわ。・・・その、あなたが嫌じゃ無かったら私の鞄の中に入れておきましょうか?」
「・・・」
「貴重なものばかりでしょうから、自分で持っていた方がいいわね」

キャサリンは、彼の沈黙を拒否と受け取った。
自分で言い出した事だが、彼の財布を預かるのは気が引ける。
きっとお金もたくさん入っているだろうし、クレジットカードやその他、貴重品だらけだろう。
そんなものは預からない方が良い。

「預かってもらおうかな・・・」
「えっ? 本気?」
「うん、財布とパスポート、タブレットも入る?」
「荷物、さっきより増えてるじゃない」
「せっかく持ってもらえるんだったら、貴重品をちゃんと持って行こうと思ってね。タブレットは無理か
 な?」

彼女は彼に言われて、ベッドの脇に置いていた自分の鞄を取った。
チャックを開けて中を確認すると、入る余裕がある。
「入るわ」

彼は金庫を開けて、パスポートとタブレット型パソコンを取り出すと彼女に渡す。
「安心して。中を盗み見たりしないから・・・」
「まさか・・・、そんなこと考えてないよ」

マックスは後ろポケットの財布を取り出すと、それもキャサリンに渡した。
彼女は、彼から受け取ったパスポートとタブレット、財布を鞄に入れると、
「荷物が少なくても、私の方が準備が良かったわね」
と言った。
ニューヨーク出発前と、この国に着いてからも彼に指摘された、荷物の少なさに対する苦言のお返しだ。

マックスは、あはははは、と笑う。
「本当だ!」
彼はキャサリンに、一本取られたと思った。

「あーあ、こんな貴重品を入れると、鞄が重いわ」
キャサリンは、彼の物はとんでもなく高価で、とんでもなく貴重な情報が入っているだろう、という意味で嫌味を言ってみる。

「本当だね、気付かなくてごめん。僕が持つよ」
彼はクスリと笑うと、彼女の鞄を取って肩に掛けた。

「似合うかな?」
「そういう意味じゃ無かったのに。でも、似合ってるわよ」

背の高い彼が、キャサリンの女性用の鞄を肩にかけている姿は、少し丈が足らず、コミカルだ。
彼女は、クスリ、と笑った。

「さあ、行こう」
マックスは、そんな彼女と自分の姿におかまいなしに言った。





2人は電車に乗って出かけた。
マックスは、タクシーを使おう、と言ったが、キャサリンが電車を使う事を主張し、彼女の主張が通った。
2人はまず、アラブ・ストリートへ向かった。

バジス駅で降りて、大通りを東に向かって歩き、2本目のクロスする通りが、アラブ・ストリートだ。
この界隈になると、アラブ風の衣装を着た人々が、通りに目立つようになる。
つばの無い、頭にぴったりとした帽子をかぶり、ゆったりとした服を着た男性、頭にスカーフを巻いて、これまたゆったりとした服を着た女性たちが、ちらほらと歩いている。

大通りを右に曲がるとすぐに、サルタン・モスクの印象的な金色のドームが見えた。
その建物があるだけで、ここが中東の都市かと勘違いしてしまう。
それほど、サルタン・モスクには存在感がある。

キャサリンは、はしゃいだ。
マックスを急かし、アラブ・ストリートを南下する。
通りには、絨毯を売る店、布を売る店、中東風のランプを売る店が並んでいる。
彼女はつい夢中になった。

「サルタン・モスクを観るんじゃなかった? ショッピングは後でもできるだろ?」
「・・・そうね、でも、きれいなんだもの」

マックスに呆れた調子で言われて、キャサリンは少し反省し、絨毯見物をあきらめると、マックスと一緒にサルタン・モスクを目指す。サルタン・モスクに着くと、あと数分で見学禁止になる時間だった。
2人は急いで中に入った。

白を基調とした建物は、緑や赤で窓枠や柱を彩られて、荘厳で美しい。
内部のモザイクも美しく、2人は感嘆のため息を漏らした。外の喧騒と熱さを忘れさせる、ひんやりとした空気が、神聖さを漂わせている。しかし、観覧時間を過ぎようとしているので、じっくりと建物内部を回ることは出来ない。
2人は感動もそこそこに建物内部から出ると、サルタン・モスクの表参道にあたるヤシの木の街路樹を植えられた歩行者用道路を散策し、アラブ・ストリートに戻る。

2人は通りをゆっくりと歩き、店を見て回った。
キャサリンは特に、美しいバティックと呼ばれる、ろうけつ染めの布地を売る店に夢中になると、その店でスカーフを何点か買った。
マックスはその間、店の表でタブレットを操作している。

次は、中東風のランプを売る店だ。
天井や壁の所狭しと並べられたランプはそれぞれ蠱惑的で、またその陳列の仕方が不思議の国に迷い込んだ様な気持ちにさせる。この店ではマックスも興味深そうに店内を見て回る。

そして、キャサリンとマックスは通りにある中東風カフェのオープンスペースで、ミントティーを頼んだ。



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