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09.04
Wed
エヴァンジェリンの息を飲む音が聞こえる。

その音に、心臓を鷲掴みされた様な痛みが走る。
鼓動が、激しく打ち出した。
自分が、情けない泣きそうな顔をしているのが分かる。
この静寂が、耐えられない。

「子供の事は、関係ないんだ・・・。あの時は、子供が出来ていたらいいって、思った。エヴァ・・・君
 をあの日、あんな風に抱いた事を、俺は凄く後悔してる。でも君じゃなきゃ、俺は、君だったから、あ
 んな風に感情を露わにしてしまった・・・。ごめん、そんな理由が言い訳にならないのは分かってるけ
 ど、君の気持ちも考えずに、子供が出来たら、君を俺に縛り付けれるって思った。君と6ヶ月離れてい
 る間、君の事ばかり思い出してた。ずっと3年、君を大事にしてこなかったのに、君を愛してるって、
 気付いたんだ」

エヴァンジェリンの顔を見ることが出来ない。
彼女が俺の告白を聞いて、困っているんじゃないかと、その表情が怖い。
やっぱり俺は、臆病だ。

「・・・私、あなたに嘘ばかりついて、来たのよ?」

彼女の否定とも肯定ともつかない言葉に、アルバートは、かすかな希望に鼓舞されてエヴァンジェリンを見た。
エヴァンジェリンのその瞳は潤んで、涙が今にも零れ落ちそうだ。
その涙の意味は? 俺を拒否する涙なのか? それとも歓びの涙?
アルバートの心臓は、煩いぐらいに大きく脈打っている。

「でも、一緒にいた時の君は本当の君だろ? 仕事や友人については嘘だったかも知れないけど、俺と一緒
 にいた時のエヴァは、本物のエヴァだ。それに俺だって・・・君に嘘をついて来た。本当の自分を隠して
 いた。確かに君に嘘をつかれていたと気付いて、傷ついたけど、それは独りよがりだったと今は思って
 いる。君をそういう風に追い込んだのは俺のせいだ。・・・エヴァのせいじゃ無い」

彼女に反論させる隙を作らない様に、一気に言った。
自分の言葉は、彼女に訴えかけている事が出来ているだろうか。

「私を、愛しているの?」

エヴァンジェリンの声が震えている。
だがその問い掛けに、アルバートは大きな希望を見た。

アルバートはエヴァンジェリンの潤んだ濃いグリーンの瞳をじっと見つめ返し、言った。

「どうしようもないくらいに」

情けない、ぎこちない笑顔が出来上がる。
そう、それが自分の中の揺るぎない答え。
それに、気付かされてしまった。
気付いてしまえば、もう後には引けない。

「アル!」

エヴァンジェリンがアルバートの身体に、植栽の縁に座ったまま横向きに抱きついて来た。


アルバートにはその一瞬が、止まった様に感じた。
彼女の身体がぶつかって来た衝撃と共に、景色が輝いて美しく見えた。

その現実に、夢を見ているんじゃないかと身体を震わせながら、アルバートはエヴァンジェリンを強く抱きしめた。
夢ではないと確かめるために。


「エヴァ、本当に? 俺を許してくれるのか? こんな俺を?」

彼女の髪に顔を埋めながら、聞いた。
震える手で、彼女の背中を掻いた。
エヴァンジェリンの匂いがする。
ずっとずっと渇望した、彼女の匂い。

「・・・正直、今は、許すっていう言葉がぴったりかどうか分からないけど、私達はお互いに自分を隠し
 て付き合ってきた。でもあなたは正直に言ってくれた。だから・・・」

エヴァンジェリンの優しいが、少し迷いを含んだ声が聞こえる。
アルバートは彼女を、きつく、きつく抱きしめた。

「これからは、そんな事はしない。もう君に自分を隠す事はしない。君を、大事にするよ」

アルバートはエヴァンジェリンの頭に頬ずりをした。
そして、抱きしめていた腕を解くと、彼女の頬を両手で覆って、熱いキスをする。

優しい、長いキスでお互いを確かめ合ってエヴァンジェリンからゆっくりと唇を離すと、エヴァンジェリンは微笑み、見つめてくれている。
アルバートも、彼女を微笑みながら見つめた。

――ああ、俺のエヴァ・・・。

彼女の濃いグリーンの瞳は、とても綺麗だ。
エヴァンジェリンがくすり、と笑って言った。

「私たち、似た者同士だったのね・・・」

アルバートも笑って、愛おしい彼女の額に額を合わせ、もう一度軽く唇にキスをする。

「俺より、エヴァの方が強いよ」

そう言って、彼女の手を取って、立ち上がらせた。
本当に彼女の方が強いと思う。
彼女に会えなかったこの1ヶ月、アルバートの身体は、後悔と逡巡でボロボロになった。
それに比べて、エヴァンジェリンは、よほど彼女に対して酷い事を繰り返してきたアルバートを許そうとしてくれている。
アルバートに、チャンスを与えようとしてくれている。
彼女の強さは、優しさと愛に裏打ちされている、とアルバートは思った。

「すごく冷えた。コートとバッグを取りに戻らなきゃ。携帯もホテルに置きっ放しだ」

途中から忘れていた寒さが、急に感じられて、身体がぶるっと震える。

「アル! ごめんなさい。私、あなたがコートを着ていない事を忘れていたわ!」

エヴァンジェリンは大きく目を見開いた。
そんな彼女にアルバートは微笑んだ。

「いいんだ。こんな場所でこんな告白をするなんて、ほんとに俺は、気が付かないな・・・。これから
 は、言ってくれ」
「あなたが、聞いてくれるかしら?」

エヴァンジェリンが少し口を尖らせる。

「君が、いつも俺を温めてくれるのなら、聞くよ」

アルバートは彼女の手を、強く握り締め返しながら言った。
エヴァンジェリンは、ええ、いいわよ、いつでも温めてあげる、と微笑みながら答える。

「ホテルに戻ろう。CEOが心配してるかもしれない。・・・それと、エヴァ、両親に会ってくれるか?」

アルバートは、はにかみながら彼女に聞いた。
エヴァンジェリンは、グリーンの瞳を少し見開いたあと、ええ、いいわよ、と繰り返した。

二人は手を繋いだまま、ホテルへ戻る。
道すがら、3年の間を埋める様にお互いのまだ伝えきれていない事を口々に話題にする。
途中、アルバートが眼鏡を掛けずに歩いている事に気付いたエヴァンジェリンが、その事を聞いた。

アルバートは照れくさそうに、あれ、伊達なんだ・・・と言った。
エヴァンジェリンは、その答えに驚き、アルバートの秘密はいったいどのぐらいあるんだろう、と思わずにはいられなかった。





==END==


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後書

『冷静な秘書の仮面の下』これにて完結です。皆様、最後までお付き合い下さり、ありがとうございます。
そして、最終話の更新が遅くなりましたことをお詫びいたします。

この『冷静な秘書の仮面の下』は、日常、もしくは一般生活においてはそれなりにこなせる男の、不器用な内面、ということが私の中で掲げたテーマでした。それと、男性目線の恋ってものを書いてみたかったんですよね。私の主観ですが、女性より男性の方がロマンチストで純粋で不器用なんじゃないかと思っておりまして、それを書いてみたかったのです。
『年下の罠』は主人公二人の心の動きを詳細に追う作風、展開でした。この作品では反対に、主人公アルバートの一人称でありながら、肝心の彼の心の細かい動きがはっきりと見えない、という何だかヤヤコシイ作風にしてみました。しかし私の技量不足で上手く表現できていなかった様に、書き上げた今となっては思います。

アルバートは繊細な心の持ち主で、エヴァンジェリンとの関係や自分の心の動きをはっきりと認識できないまま、頭痛を起こしたり胃が痛くなったりしてしまいます。相手の事が好きなんだけど素直になれない。優しく出来ない。でも本当は優しくしたい。それを、自身の劣等感を隠すためのプライド(?)が邪魔をして、認めたく無くて、頭痛を起こしたりご飯食べられ無くなったり。
ほんと、アルバートは馬鹿だなぁ。どかーんとぶつかっちまえよ!っと言いたいところですが、相手の事が好きだと、よけいに言えないものですよね。
作者としてはこんな駄目っ子アルバート君がかわいかったです。
アルバートもエヴァンジェリンも、相手の事が好きだから本当の事が言えない。二人共最初は、嘘を付こうと思っていたわけでは無く、何となく言わないでいる間に言えなくなってた、といった感じでしょうか。そしてそれが気付くと大きな溝になっていた・・・という二人の恋の物語でした。

最後に、読んで下さった方々、応援、拍手、ぽち下さった方に改めて感謝、感謝です。
稚拙な文章、表現で、読みにくい箇所が多々あったかと思います。まだまだお勉強中の身、皆様の応援に支えられて書き終えることができました。ありがとうございました。
                                      nicika




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08.24
Sat
アルバートは息をするために、言葉を切った。
喉が張り付く。
ぐっと、唾を飲み込んで、張り付いた喉に潤いを与える。
ごくり、と自分の喉仏が上下する音が、やけに大きく聞こえた。

「そしたら、・・・そしたら親父が、大学に行けって、金を出してくれた。がんばれって、言ってくれた」

大きく息を吐きながら言った。

「それでも俺は、両親を心の底から許すことは出来なくて・・・、その後は・・・、奨学金を受けながら
 大学に行って、MBAを取った。在学中は故郷にほとんど戻らなかったし連絡も取らなかった。そんな
 俺でも、卒業式は両親に知らせる必要があると思って知らせた。来なくてもいいよ、と伝える事も忘れ
 ずに電話を掛けた。在学中、両親の方から連絡してくることも無かったから、疎遠な息子の卒業式なん
 て来たくも無いだろうと思ったし、俺も来てほしいとも思って無かった。・・・だけど」

くしゃり、と自分の顔が歪むのが分かった。

「親父と母さんが、来たんだ。卒業式。・・・親父、泣いてた。あの親父が。いつも顰(しか)めっ面し
 て、怒鳴ってたあの親父が。鼻の頭真っ赤にして。俺の事、息子でいてくれて、誇りだって」

アルバートは掛けていた眼鏡を外して、掌で目を覆った。
今でのあの時の親父の顔は、鮮明に思い出せる。
泣きながら親父は、こんな俺の所に生まれてくれてありがとう、と呟いた。
そこに、自分の知らない小さな小さな親父が居た。

熱いものが瞳に溢れそうになる。
そんな情けない姿をエヴァンジェリンに見せたくなくて、掌で瞳を覆ったまま、ぐっと唾をまた飲み込んだ。
瞼に触れる掌が冷たくて、瞳の熱さを奪ってくれる。

「ピピコムに入って、生まれた街やそれまでの生活を誰にも言わずにいた。両親に対するわだかまりは溶
 けていた。だけど、捨てたかった。何も無かった事にしたかったんだ。・・・俺の中には、今までの自
 分を恥ずかしいと思う気持ちがまだ残っているんだ。だから君に、言えなかった・・・。君に、蔑まれ
 るんじゃ無いかと、同情されるんじゃ無いかと、思って言えなかった。君に、嫌われたく無くて、言え
 なかった」

友人を見殺しにする様な事をしておきながら、自分は違うと信じ、その事を反省もせず、周りを憎んだ。
そのくせ、たくさんの人の善意に支えられて生きて来た。
彼らの善意を、生まれた街ごと過去に葬って、いっぱしの人間の様に過ごして来た。
彼らの助け手のおかけで、自分はここにいる事が出来ていると言うのに。

そしてその事で、彼女を傷つけていた。
そんな事にも気付かないくらい、自分は傲慢で利己的で愚かだ。
自分のプライドを守る事に精一杯で、彼女を思いやる事も出来なかった。

「アル・・・」

エヴァンジェリンはそう一言呟くと、膝で握りしめていたアルバートの拳に手をそっと添える。
その柔らかな触れ方で、彼女が自分を労ってくれていると分かる。
それは友人や知人に対する労りと同じかも知れないけれど、彼女の優しさが嬉しい。
こんな自分を蔑まず、見捨てずに、この寒さの中で自分の話を最後まで辛抱強く聞いてくれた彼女の優しさに、縋りたい。

「君が・・・、俺の事を許せないと、思う気持ちは分かる。俺は・・・俺は、自分の事ばかりで、君の事
 を少しも思いやらなかった。君がそんなに苦しんでるなんて、気付かなかった。君が深く自分の事を語
 らないのを、それでいいと思ってた。俺も、自分の事について語らなくていいから・・・。逆に語らせ
 ない様に仕向けていたのかも知れない。自分の生い立ちや両親に対するわだかまりを誰かに、君に、話
 さなくて良くてホッとしてた。・・・君を、そんな風に追い込んだのは俺のせいだ。悪かった・・・」

「・・・アル、そんな事、無い・・・。 私も、もっと早くあなたに告げるべきだった。あなたのせいじゃ
 無い・・・」

彼女の言葉がこの緊張した空気を和らげるためだと分かっていても、心からの言葉だと思いたいという気持ちが起きる。
彼女の優しい言葉を、信じていいのだろうか。

いや、信じたいとか、信じるべきか、では無いのだ。
そんな、自分を守る考えは捨てようと決めたはずだった。
彼女にもし次に会う事が出来れば、彼女と連絡がつけば、正直に、自分の気持ちを伝えようと決めていた。
もう、自分が傷つくことを恐れてはいけない。
彼女はさっき、アルバートの事を愛していた、と言っていた。
だから真実を伝えられなかったと。
過去形ではあるけれど、その気持ちがまだ彼女の中に存在してくれている事を願うしかない。

「エヴァ・・・、俺は、こんな俺でも許してくれるのなら、君とずっと一緒に、いたい。君とずっと暮ら
 していきたい」





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08.17
Sat
やっぱり、ドクターは正しかったな、とアルバートは治まっていた胃のむかつきをまた感じながら思った。
本当に、自分の独善的な行動が悔やまれる。
今だって、彼女に先に告白をさせて、自分は黙っていた。
先に話さなければならないのは、自分の方なのに。
本当に意気地が無い。

「エヴァ、俺がNYで生まれて育ったことは知ってるよな・・・」

アルバートは呟く様に言った。
エヴァンジェリンが、分かれた、という言葉を使ったことが心に引っ掛かっているが、その事は敢えて無視した。
彼女は、アルバートの言葉の意味が分からずに、俯かせていた顔を少し上げてこちらを見る。
その表情は、苦渋に満ちている。

彼女にそんな表情をさせているのは自分なんだと、アルバートは辛くなる。

「俺は・・・」

アルバートはごくりと唾を飲み込んでから続けた。

「俺は、サウスブロンクスの近くで育った。良く知っていると思うけど、あまり治安のいい場所じゃ無く
 て、あまり裕福だったとは言えない。そこら辺の家庭ではよくある話の通り、親父は、飲むと母さんを
 殴って、毎日みたいに二人は喧嘩して。・・・俺はそんな家庭に育った子供が通る道を、当たり前みた
 いになぞった生活をしてた。中学に入る頃には、連れとマリファナをやって、近所の店で万引きをした。
 コカインまではやらなかった。いや、一度はした。けど、コカインをやり出すと後は落ちていくだけな
 のが分かってたから、それ以上はやらなかった。俺と仲のいい連れはギャングに入らず、何とか暮らし
 てた」
「アル・・・」

エヴァンジェリンは驚いた顔をしている。
彼女にこの事を話すのは初めてだ。
いや、大学に入ってから、誰にもこの話はしていない。
この事を伝えた時の、彼女の反応が怖かった。
だから、今まで言えなかった。

「この、右腕にある傷、ガラスで切ったって言ってたけど、嘘なんだ。高校に入ってから巻き込まれた
 喧嘩で、相手が持ってたナイフで切られた。相手が振りかざしたのを避けようとして、腕を切られた。
 相手が銃を持っていなかっただけ、ラッキーだった」

アルバートは言いながら、スーツの下に隠れて今は見えない右腕の傷を指した。
エヴァンジェリンに微笑みかけたつもりだが、自分でも情けない表情をしている事が分かる。
じっと自分を見つめる彼女の瞳に、侮蔑の色が含まれていないかが、気になる。
こんな育ちの悪い自分を、軽蔑していないだろうか?
彼女の瞳を見ることが出来ない。

「・・・それから暫く経って、友人の一人がコカインのやり過ぎで死んだ」
「アル、何てこと・・・」

彼女は言葉と同時に、悼ましさを表情に表す。
アルバートは唇を噛みしめた。
まだ全てを話していない。
彼女に、きちんと全てを伝えなければならない。

「そいつが、コカインをやってるのは知ってた。だけど、俺たちは真剣に彼を注意したことは無かった。
 そういうのは個人の自由だって思ってた。冗談みたいに、止めとけよ、廃人になるぞ、って言う事は
 あったけど、それだけだ。それ以上言う事はしなかった。・・・けど、俺は、あいつが死んだ事ですご
 く怖くなった。今自分の住んでいる街が、そんな生活が、すごく怖くなった。俺もこの街にいる限り、
 遅かれ早かれそうなるんじゃ無いかと思った。こんな生活を続けていたら、何かのトラブルに巻き込ま
 れて死ぬか、良くても両親みたいにお互い罵りあって貧しい生活で自分をすり減らす。・・・そんな風
 に成りたくなくて、俺は自分のそれまでの生活を変える事にした」

友人に真剣に生き方を変えさせようともせず、ラリッているあいつを見て笑い転げていた。
そんな若い頃の自分に反吐が出る。
そんな人間の癖に、自分は違うと思っていた。
そこから脱出してやると、夢を見た。

「高1の途中から、勉強をし出した。その街から抜け出すのには、とりあえず勉強を頑張って、大学に行
 こうと思った。今考えると、世間知らずの無謀な考えだったと思う。でもその時はそれしか方法が浮か
 ばなかった。ただ俺は、ラッキーだったんだ。高校の担任がそんな俺を喜んでくれて、放課後、塾にな
 んか行けない俺に、勉強を教えてくれた。毎日。それで、俺の成績はどんどん上がり出して、それまで
 の連れとは疎遠になった」

アルバートは凍えた指を握り締めた。
指の先の感覚が無くなってきている。

「両親は、勉強をし出した俺に何も言わなかった。高2の終わりに進路を決めなきゃならない時に、俺は
 親父に大学に行きたいって言った。成績はいい線行くようになってた。そしたら親父は鼻で笑って、俺
 を馬鹿にした。こんな街で生まれて、何考えてんだって言われた。金なんか無いって、そんな夢みたい
 な事考えるなって。俺は悔しかった。絶対に見返してやるって思った。お前らみたいな人間にはならな
 い、そう思って、がむしゃらだった」

もう彼女の顔は見れなかった。
だがエヴァンジェリンがじっと自分を見つめている視線を感じる。
彼女は何故、何も聞いてこないんだろう。
彼女の沈黙が息苦しい。

「担任の先生が、そんな両親を一生懸命に説得してくれた。・・・ほんとにすごく良く、してくれたんだ。
 それで、親父たちは渋々、受験に同意して、俺は受かった。実は、受かっても入学金とか授業料とかが
 払えないと思ってたから、俺は大学に入ることを内心諦めてた。合格するだけでも、親父たちやその街
 を見返してやれると思ってた」





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